2025年1月のFNN世論調査によると、「年収103万円の壁」の引き上げ幅は「178万円まで」と「140~150万円まで」を望む人がそれぞれ約32%。FPの浦上登さんは「パートタイムで働く主婦やアルバイトの学生は、103万円を超えないよう就労調整してきたが、今後は調整しなくても社会保険料がかかってくる」という――。

働いても税金がかからない限度が「103万円の壁」だった

昨年10月27日の衆議院選挙で自公は過半数割れをし、日本の政治は大きく変動した。その際、国民民主党は「手取りを増やす」として、税金がかからない「基礎控除と給与所得控除の合計額」を103万円から178万円に拡大する政策を掲げ、議席を4倍に増した。

働いてもなかなか生活が楽にならない現状に、減税により「手取りを増やす」というわかりやすい呼びかけが、若者を中心に一般の国民の共感をえて支持を伸ばしたということができる。

「103万円の壁」の問題はまず学生の働き控えを解消する対策として提起された。

収入が103万円を超えると税金がかかるので年末にかけて働き控えがおきる。労働力の不足している日本にとって働き控えは望ましくないし、学生本人にとってもよいことではない。これと同様の現象は、パートタイムで働く主婦などにも見られる。

ところが、衆議院選挙後は政党間の政治的な駆け引きの対象となり、与党の税務調査会が提示した123万円まで引き上げるという案は、178万円まで遠く、国民民主党は合意せず、年を越すことになった。

今後ありうる展開は123万円のままで本予算が成立する、123万円と178万円の中間値で成立する、178万円の満額回答になるかの3通りだろう。

【図表1】103万円の壁を超えるとかかってくる税金・社会保険料など

非課税が178万円までになれば、学生も主婦も助かる?

「103万円の壁」問題の本質とは何だろうか?

従来言われてきた「103万円の壁」は、非課税の状態から、それ以上収入が増えると税金がかかる境界のことで、パートタイム主婦などの多くの人がその手前で働くのをやめていた「壁」のことである。

「基礎控除」とは原則すべての人に適用されるもの、「給与所得控除」は給与所得者に適用される。「基礎控除と給与所得控除の合計額」等を103万円から178万円に拡大するというのは給与所得者向けの説明で、給与所得者以外は基礎控除が一律75万円上がる。そうすれば、学生、パートタイム主婦だけでなく、現役の会社員、公務員、個人事業主、引退した年金生活者など、すべての人に恩恵がわたることになる。

するとその人の所得にもよるが、所得税、住民税を合わせ、年間で11.25万円から41.25万円の手取りが増えることになる。かなり大きなメリットだ。当初は働く学生(大学生のアルバイトなど)の働き控えを抑制するためと説明され、そのPR効果が大きかったことは事実だが、恩恵を受けるのは働く学生だけではなく、国民全体なのだ。

手取りを増やすことは、富が政府から国民に移ることなので、その移った富が新たな消費を生み出せば、経済の活性化をもたらす。178万円まで基礎控除等を拡大する政策は、減税による経済成長を促す政策ということができる。

一部のマスコミは、学生やパートタイム主婦の働き控えに範囲を限定して論じているようだが、本当はもっと大きい政策ということがわかる。