残業を減らす前に、先んじて「給与アップ」

グローバル人事部 労政グループ マネージャー 菊地さや子さん

「働き方改革」はただの時短目的ではない。日本的な「専業主婦がいる男性中心の働き方」では、ダイバーシティが実現しないから、働き方改革が必要になってくるのだ。

同社では、効率化での利益はすべて人材に投資している。残業削減で残業代が減るという不安を払拭(ふっしょく)するために、先行投資として基本給を1万円引き上げた。所定労働時間の短縮で実質的な賃上げもした。軽量のモバイルPCも配り、セキュリティを整備して「どこでもオフィス」(テレワーク)ができるようにした。評価と報酬、そして顧客の巻き込みが働き方改革の本気度の表れなのだが、西井社長は4時半終業も含め、各地に飛んでは顧客に「働き方改革」への協力を求めている。

グローバル人事部マネージャーの菊地さや子さんはその効果が目に見えて表れているという。

「もともと残業が当たり前という風土で、07年度の総実労働時間は2039時間、営業利益は605億円でした。08年度から労使での取り組みを始め、15年度は1947時間で908億円です。16年度からは西井社長が改革を加速し、57時間短縮されて、20年度に1800時間が目標だったのですが、前倒しにして18年度に達成する目標になりました」

社員からの反発はなかったのか。

「よく聞かれますが、最初はいろいろあるものの、『労働時間を短くする』と決まったら、その時間内でどうしたら仕事をまわせるか、個人や組織で真剣に考え、工夫してくれています」

労働時間の短縮により、女性の働き方も変わった。育児中の時短勤務を解除したいという相談や、実際に解除する人が増えているという。