記者会見でのNGワード「イ・ゴ・オ・シまい」

記者会見にあたって、沙希は三波社長にもう1つアドバイスをします。

謝罪会見では“解毒”という言葉を頭に置いて、解毒に徹して下さい。そのためには、次の言葉を絶対に使わないで下さい。遺憾・誤解・お騒がせし・知らなかった、の四つです。頭の字を一語ずつ繋げて“イ・ゴ・オ・シまい”と記憶して下さい。これを口にしたら、以後おしまいになると思って」

「以後おしまい、ですか。確かに……、どれも他人事のような印象ですね。よく使っている会見や記事を目にしますが。肝に銘じておきます」

「遺憾」「誤解」「お騒がせしました」「知らなかった」

いずれも不祥事を起こした企業の記者会見で決まり文句のように使われているため、使うのが当然と思っている人が多いと思いますが、逆です。絶対に使うべきではありません。なぜなら、これらの言葉を使うと、心から反省しているようにはとられないからです。

「遺憾」とは残念とか気の毒という意味です。従って、当事者ではなく、第三者が使う言葉なので、無責任な印象を与えてしまいます。

「誤解」とは意味を取り違えること。従って、責任は言葉を発した人と受けた人の双方にあるということになってしまうので、反省の気持ちが足りない印象を与えます。

「お騒がせしました」とは、問題を発生させたことではなく、発覚したことをわびているに過ぎません。その結果発生させたこと自体への後悔の念が伝わりません。あるいは、半ば報道したマスコミを責めているようにも聞こえてしまいます。

「知らなかった」とは、報告が無かったまたは聞くことをしなかった時に起きる状態です。よって、管理・監督する立場の人間が使うと、無能もしくは職務怠慢という印象を与えるだけで、許しを得て信頼を回復することにつながりません。

浮気をした亭主が、怒る奥さんに向かって、「遺憾に思っています」とか「誤解を与えてすみません」とか「お騒がせして申し訳ありません」と言ったら許してもらえるでしょうか。警備員が「防犯カメラが故障していることを知りませんでした」と言ったら許してもらえるでしょうか。

こうした身近な例を置き換えてみると、この4つの言葉がいかに無力であり、弊害があるかをご理解いただけると思います。

田中優介(たなか・ゆうすけ)
リスクヘッジ 社長
1987年東京都生まれ。明治大学法学部法律学科卒業。2010年セイコーウオッチに入社。お客様相談室、広報部など危機管理にまつわる部署にて従事した後、2014年退社。同年、リスクヘッジ入社。解説部長、教育事業本部長を経て、現在代表取締役社長。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
橋下徹「日大広報が炎上した本当の理由」
2018上期"失脚おじさん"の残念な共通点
橋下徹「これが疑惑真相追及の極意だ」
超エリート「女性代議士」がつまずくワケ
炎上必至の面接質問「残業できる?」に今、学生はこう切り返す