テレビコマーシャルの自粛などを進めているが……

この状況を適正化するためには、銀行、監督官庁、個人、それぞれの取り組みが必要になるだろう。

すでに、銀行はテレビコマーシャルを自粛するなど、過度な勧誘の是正に動いている。いまだ取り組みは十分ではないとの考えもあるようであり、自主的な是正措置は今後も強化されるべきと考える。過去の貸し出し案件の中には、年収がないにもかかわらず、銀行カードローンを使ってお金を借りていた人もいる。銀行のカードローン事業の継続性、消費者保護の観点から、業界全体で厳格な審査の実施が求められる。

また、銀行業界は、個人がカードローンの利用に付随するリスクを正確に理解できるよう取り組みを進めるべきだ。全銀協はウェブサイトでカードローンの借りすぎに注意すべきという広告を掲載している。ただ、借り入れへの抵抗感が少ない個人が増えているというリスクを考えると、課題は多い。

今後は「レンダーズ・ライアビリティー」が問われる

現状、こうした取り組みは、銀行の自主的な取り組みに任せられている。低金利の現在、金融庁が銀行カードローンを貸金業法の対象外とするのであれば、銀行カードローン事業はうまみのあるビジネスでありつづけることに変わりはない。従来のように、できるだけ貸し出しを増やしたいという考えが重視されるケースもあるだろう。業界全体でカードローンビジネスのあるべき姿を考える必要がある。

また、多重債務者を増やさないためにも、金融庁をはじめ監督官庁に対し、銀行業界と連携して相応の規制を検討すべきとの指摘もある。リーマンショック後の米国のように、一方的な勧誘やリスク管理の甘さを是正するために、規制を強化する手法にはそれなりの効果があったといわれている。それが、返済能力を超えた借り入れを防ぎ、利用者(消費者)の保護にもつながる。

個人は、借り入れの負担、リスクを理解しなければならない。他の借り入れの返済のために、カードローンを使えば、支払い金利などの負担は増す。それは、“真綿で首を絞められる”ことに等しい。現状の収入をもとに、借入金の金利を支払った後に、自由に使うことができるお金がいくら残るか、その範囲内で生活ができるかというように、自らの収入と支出のバランスを理解することがファイナンシャル・リテラシーを身に着ける第一歩となるだろう。

今後は「レンダーズ・ライアビリティー(貸主責任)」が問われる。その時のガイドラインは銀行業界で統一されたほうがいいだろう。その上で、銀行はカードローンビジネスの営業を行い、持続可能な形で個人向けの貸出ビジネスを行う。それが、あるべきカードローンビジネスと考える。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
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