消費税論議から安倍政権は逃げまくっている

【塩田】19年10月に予定されている消費税の10%への引き上げは必要ですか。

【玉木】このまま行くと、2040年代に社会保障給付が190兆円になる。換算すると、消費税は22%くらいが必要です。財源を消費税だけに頼る必要はないけど、給付と負担のバランスが取れた政策を一体的に推し進めることが不可欠です。今、安倍政権は財源の議論から逃げまくっています。全部、赤字国債の発行でまかなっているのが安倍政権の現状ですが、逃げたって無理なんですよ。消費税を上げたときにどんな安心社会を実現するかという形を示すことが大事です。われわれは財源の議論から逃げずに議論していきたい。

【塩田】「長期『一強』体制」が続いていますが、国民の多くは、代議制民主主義による緊張感のある政治、政権交代可能な政党政治を期待しているのではないかと思います。

【玉木】そこが一番大事です。これから2回の参院選で衆参ねじれのような状況をつくり出す。2回の参院選ということは2021年になります。政権奪還を目指して22年頃をターゲットに、2回の参院選と、必ず1回ある衆院選で政権交代が可能になる議席を確保する。

何よりも次の来年の参院選ですね。数字の上では、5年前に野党がぼろ負けしているので、議席の上積みは可能です。鍵は野党共闘、選挙区での野党間調整です。衆院選では政策や基本理念が異なる共産党と組むのは難しいですが、参院選は別です。安倍政権の暴走を許さない。政権交代可能な政治状況を再現する。そのためにはあらゆる方策を駆使して野党側の議席を増やさなければなりません。比例代表と定数2~6人の複数区はそれぞれの党が頑張って議席を増やす。問題は全国に32ある1人区です。一本化を図って1議席でも多く取るように野党間の調整を進めていきます。

【塩田】立憲民主党は去年の総選挙で勝利し、「国民の支持獲得・自公の対極の中核・野党再編には独自路線」という意識を強く持っていますが、野党の共闘、再結集の道は。

【玉木】立憲民主党の考えは分かります。排除され、苦しい中で総選挙を戦い、野党第一党となった。だけど、逆に立憲民主党は野党第一党として同じように排除するようなことは避けてほしい。政党は、純化していくと、人の数だけ党ができてしまう。これまでの野党の先輩方を見て思うけど、小異にこだわる。自民党は10のうち1だけでも一致したら、権力を握るために一致する。でも、野党は10のうち9まで同じでも、最後の1つが違うと、ときにはいがみ合って細かく分かれていく。これを繰り返したら、いつまでも政権を取れません。

私は、権力奪取はある種、数合わせで上等だと考えています。政治は異なる意見をまとめ上げていくアートです。立憲民主党も、寛容な心で、安倍政権に対峙する大きな塊をつくっていく方向性でやっていただければと思います。安倍政権がこういうひどい状況なので、野党をまとめあげていく責任が、野党第一党にはあります。われわれが向き合わなければいけないのは安倍政権です。

【塩田】安倍内閣は今年3月に浮上した森友学園の財務省決裁文書改ざん問題を抱え、「幕引き」の演出に懸命です。この問題にどう対応すべきですか。

【玉木】厳しく追及し、全容を明らかにして後の世代に引き継ぐべき事件です。130年以上前、北海道開拓使官有物払い下げ事件が原因で「明治14年の政変」が起こり、参議の大隈重信(後に首相)が政府を追われた。これに匹敵する歴史的な大事件です。なぜなら、国庫の支出入を管理する財務省が決裁文書を300カ所以上も改ざんした。民主主義の根幹を揺るがす事件です。国民は去年の総選挙でそれを知らないまま1票を投じ、その結果、安倍政権は権力を手にしたわけで、ある種、フェイク情報に基づくフェイク権力といっていい。これは大問題です。