突き出たおなかで腰痛にも

もう一つが、昨今、国民病といわれる腰痛です。厚生労働省の調査によると、男性の自覚症状でもっとも多いのが腰痛で、女性でも2位でした。腰痛の原因は仕事や加齢、生活習慣、ストレスなどさまざまですが、内臓脂肪の蓄積も見逃すことができません。

背骨は小さな骨が縦に積み重なってできています。頭の重さは個人差が大きいものの、体重の7~10パーセントといわれ、体重60キログラムの人では約5キログラムあります。これだけの重さが真上から背骨にかかるため、背骨は直線ではなく、ゆるやかなS字カーブを描いて負担を分散できるようになっています。

では、内臓脂肪がたまるとどうなるでしょうか。おなかがせり出してくると、重いおなかのバランスを取るために体が後ろにそり返り、背骨の腰の部分が前に突き出します。少し猫背になる傾向も見られます。

図2をご覧ください。左が正常な人、右が内臓脂肪がたまった人です。この状態が続くと背中の筋肉が常に緊張し、コリや張りを感じるようになります。はた目には堂々とした立ち姿に見えなくもありませんが、当の本人は痛くてしかたないのですから、気の毒としかいいようがありません。

妊婦さんの腰痛も同じしくみで発生します。しかし、出産すればもとに戻る妊婦さんと違って、内臓脂肪が自然に出て行くことはありません。それどころか、腰痛があることで、あまり体を動かさなくなって、さらに肥満が進み、腰痛が悪化するという悪循環におちいる人が目立ちます。

内臓脂肪で腹がせり出してくると、バランスをとるために腰に余計な負担がかかる。(図版提供=幻冬舎)
奥田昌子(おくだ・まさこ)
内科医。京都大学大学院医学研究科修了。京都大学博士(医学)。愛知県出身。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何か考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で20万人以上の診察にあたる。大手化学メーカー産業医を兼務。著書に『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)『健康診断 その「B判定」は見逃すと怖い』(青春新書インテリジェンス)、『実はこんなに間違っていた! 日本人の健康法』(大和書房)などがある。
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