「表情分析官」が語る米朝会談、本当の勝者
2018年6月12日に開かれた史上初の米朝首脳会談。日本に数人しかいない認定FACS(顔面動作符号化システム)コーダー(表情分析官)で、微表情研究者の清水建二氏に両首脳の表情分析を依頼し、本当の勝者を探った。
「まずは冒頭、2人が近づき最初の握手をする場面です。米国のドナルド・トランプ大統領は、眉間にシワを寄せ、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に言葉をかけながらもずっと金氏から視線を逸らしません。眉間にシワの寄る表情は、怒り、熟考、決意の心理を表す。会談が交渉の場であることから、この場合は決意と見るのが妥当でしょう。会談に臨む決意を、非言語で表明してみせたといえます」
シワを寄せる表情は、怒りの表情と認識され、相手に心理的圧迫や脅威を与える。「俺を舐めるなよ」という牽制の意図が込められていたのだろう。金氏はそんなトランプ氏の圧力を受けながらも、視線を時折逸らし、直視するのを避けている様子が見受けられる。
「通常なら、形式的にも笑顔で握手が交わされるはずの場面です。予想外のトランプ氏の行動に一種の戸惑いを感じたためではないでしょうか」
だが、金氏もその意図を読み取った。
「ここで金氏は、軽く口角を引き上げた笑顔を向けています。これは初対面の相手に対する礼儀とも考えられますが、トランプ氏の圧迫的な表情をなだめ、中和するためにつくったものである可能性が高い。なぜなら、トランプ氏と握手を終え正面を向くとき、金氏の表情から笑顔が消えるからです。儀礼的な場としてとらえているならば、笑顔が維持されたままであるはずです」
このようにトランプ氏が圧力をかけるのに対し、金氏が視線を逸らすなど、笑顔でソフトランディングを試みる場面は随所に見られ、目を合わせている場面は非常に少ない。ボディランゲージにおいてもトランプ氏は金氏を心理的に支配しようとしている。