危機を乗り切るための「助っ人」はどう選ぶ?

効果的な協働関係を構築し、維持する能力のおかげで、きわめて複雑で困難な挑戦を克服することができたCEOを紹介しよう。

このCEOは就任後まもなく、前任者が財務上の大きな問題を隠ぺいしていたことに気づいた。会社を正常に戻すためには、幹部チームに問題の規模を認識させ、厳しく不快な仕事に同意させる必要があると、彼は判断した。

財務担当副社長や社外監査人との会議は、開くたびに彼の懸念を深め、就任後4カ月間、彼は財務危機への対処に大方の時間を費やし、戦略や組織の問題にはほとんど目を向けなかった。

現状をしっかり把握した彼は、まず直属の部下と社外会議を行い、その後、幹部社員全員を集めた全体会議を開いて、会社が直面している問題を説明することにした。社外会議の目的は、副社長たちに問題を理解させ、それに対処するための自分の案を支持させることだった。しかし、最初の会議で副社長たちは彼が「新任の上司だというだけで」、彼の分析をあれこれ理屈をつけて否定しようとした。

2度目の会議の前に、彼は3人のアドバイザーを招集した。1人は幹部社員の間で厚い信頼を得ていた元役員。もう1人はフォーチュン50社企業の元CFO(最高財務責任者)で、証券取引委員会の調査官を務めたこともある人物だった。3人目のアドバイザーは、CEOの元上司で、個人的な相談相手でもあった。

CEOは各アドバイザーに会って状況を説明し、それぞれ異なるタイプの助力を求めた。元役員には、政治的アドバイザーとして、行動が必要だということを副社長たちに納得させる手助けをしてもらいたいと頼んだ。元CFOには、会社が直面している財務リスクや監査人たちが提案している救済策について教えてほしいと頼んだ。元上司には、前進していくなかで生じる悩みや不安の聞き役になってもらった。