東日本大震災以降、太陽光発電を中心に急増する再生可能エネルギーは、CO2排出量ゼロなど、さまざまなメリットがある一方で、導入拡大に向けては多くの課題がある。昨今のニュースでは、「送電線に空きがなく、再生可能エネルギーがつなげない」といった声も聞かれるが、いったい何が問題なのか、また、どのように導入を進めていくべきなのか、レポートする。
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コントロールが難しい再生可能エネルギー

電気を安定して家庭や工場に届けるためには、電気の消費量(需要)と生産量(供給)のバランスをとらなければならない。このバランスが崩れてしまうと、周波数に乱れが生じ、工場の機器などに影響が生じたり、最悪の場合は大規模な停電につながってしまう。

「日本では全国いたる所で安定した電気が供給されている。それが、大企業から中小企業まで、技術立国の精度の高い機械加工を支えていると言っていい。例えば、自動車に使われる高品質な部品は、高品質な電気が欠かせない。電気の質を維持するためにも、需要と供給のバランスを常に一致させることが大事な理由が、そこにある」

こう話すのは、東京大学生産技術研究所の金子祥三研究顧問(工学博士)。金子氏が三菱重工業在籍時に携わっていた火力発電プラントは、技術が集積されていて、発電機は常にきれいな交流波形の電気を造りだしていた。しかし、太陽光や風力などの再生可能エネルギーではそうはいかない。天候に左右されるため発電量がコントロールできないという、需要と供給のバランスを確保するにあたっての致命的な側面を持つ。

電力ネットワークが串型の日本、メッシュ型のヨーロッパ

電気が不足しているときは余っている国や地域から、逆に余っているときは不足している国や地域へ、それぞれやりとりするという方法もある。陸続きの欧州における電力ネットワーク(送電線などの電気を送る系統)は、網目状に張り巡らされた「メッシュ型」であり、他の国やエリアと簡単に電気をやりとりできるが、停電が発生したときは広い範囲に影響がおよぶ可能性があるというデメリットがある。

一方、島国の日本では、他国との電気のやりとりができない。また、国土が南北に長いため、電力ネットワークが北海道から九州まで一直線に並び、一本の串団子のような状態であることから、「串型」と呼ばれている。需要と供給のバランスは基本的にエリアごとに管理されているので、隣接するエリアに電気を流せる量は管理しやすい。こうした管理の方法は、あるエリアで停電が発生しても、他のエリアは影響を受けにくいというメリットがある。