魅力的な会社にしないと優秀な人材は集まらない
働き方次第で、暮らし方も夫婦関係も変わる。またこの働き方は多くの有能な人材を惹き付けている。西井社長は働き方改革をする理由の1つとして「人材の獲得」を挙げた。
「どの企業でもほしいと思う特定分野の人材は、どんな人気企業でも獲得が難しい。魅力的な会社にしないと優秀な人材が集まりません」
コーポレート戦略部でM&Aの実務を担当する和田直大さん(米国公認会計士)は16年、味の素に転職してきた。同社は中途人材の採用にも熱心だ。
「前職は朝も早いし、帰宅は深夜で、本当に大変な仕事でした。こういう働き方のままでいいのか、これは家族にとって幸せな働き方なのかと悩んでいました」
そこで、2人目の子どもが生まれるタイミングで、働いていた妻のことも考え、職場を変えようと決意。
「1人目のときは、家族でご飯を食べることもなかったですし、土日もお客さまに呼ばれれば仕事、家にいても疲れ果てて寝ていました。当然子どももなつかない(苦笑)」
次の会社は「キャリアも家族との時間も大切にして柔軟に働けるところ」にしようと、慎重にリサーチした末、味の素に決めた。
「『会社はオプションを提示します。そのなかから自分に合った働き方をピックしていっていい』と言われました。勤務時間や働く場所にも、選択肢を与えてくれるというのが転職の決め手でした。今は海外との深夜のミーティングも、帰宅して子どもとご飯を食べて寝かせてから、家からウェブ会議ができます。ヨーロッパで育ったので、家族と夕食をとるのは当たり前のことでした。働き方の選択肢がたくさんあるというのはとても幸せなことだと思います」
しかし同時に厳しさもある。権利には責任もついてくる。
「労働時間は非常に短くなりましたが、昔よりも会社が大きくなり、海外との取引も多く、仕事はむしろ増えているはず。本当に効率化が必要です」