「具体化したい人」と「参考になる意見をくれる人」

しかし、種明かしをしてしまえば、コンサルタントタイプと技能者タイプの相性は、本当のところそんなに悪くない。

成果やゴールに向かってどう動くかを考え、実行したい技能者は、コンサルタントが抽象論にとどまらず、具体的にイメージできる話をしさえすれば、「へー、世界はそんな風に動いているのか。それなら、自分のアイデアもトレンドに合うな」と受け入れることができる。

秋山進『職場の「やりづらい人」を動かす技術』(KADOKAWA)

さらに技能者がコンサルタントに対して「今から言うのは単なる思い付きですが……トレンドや法則に合っているといいのですが、どうでしょう?」みたいなトーンで相談でもすれば、コンサルタントは大喜びで答えてくれるだろう。

コミュニケーションの取り方次第では、互いに興味を持って話せる者どうしなのだ。まず、自分と相手がいかに「違う」かを認識し、その違いを前提にしながら互いに歩み寄る姿勢と声掛けさえすれば、格段に気持ちよく、かつ生産性の高い仕事ができるようになる。

一方で、コンサルタントタイプと本当に相性が悪いのは「現実を見抜く観察者」と「未来を創る革新者」だ。

組織において「相性」はバカにならない

「現実を見抜く観察者」は、視点以外はコンサルタントと同じだが、この「ミクロとマクロの差」は、仕事を進めるうえで実に深い溝をもたらす。生産計画ひとつとっても、コンサルタントが世界情勢から未来予測をし、それに合わせて計画を立てたがるのに対し、観察者は目の前の顧客の言動や昨年対比から現実的な計画に固執し、まったく話がかみ合わないことが多い。

「未来を創る革新者」はマクロを直観的にとらえ、当たれば大成功も可能なアイデアを繰り出すが、そのアイデアが計数的な分析の範囲を大きく超えていることも多い。裏付けのある現実的な姿を目指そうとするコンサルタントからすると、「そんな山勘と勢いだけでうまく行くと思ってるの!?」ということになる。

いずれも相性診断は×である。

ただし、相性診断がバツの関係であっても、自分と相手のクセを把握し、相手にあった問いかけや相談のしかたをすることで、仕事は随分とやりやすくなり、成果も出しやすくなる。

いろいろな人が集まって活動する組織において、これまで軽んじられていた「相性」はバカにならない。それが、30年近く組織とそこで働く人々を見てきた私の結論だ。

生産性向上や働き方改革が叫ばれる昨今、案外この「相性問題」に取り組むことが、多くの職場の解決策となるのではないだろうか。

秋山 進(あきやま・すすむ)
プリンシプル・コンサルティング・グループ代表
1963年、奈良県生まれ。京都大学経済学部卒業後、リクルートに入社し事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして活躍。現在は、経営リスク診断をベースに、組織構造設計などのプロフェッショナルが集まるプリンシプル・コンサルティング・グループを主宰し、代表取締役を務める。著書に『社長が“将来”役員にしたい人』(日本能率協会マネジメントセンター)、『「一体感」が会社を潰す』(PHP 研究所)などがある。
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