「私たちは受動喫煙防止に反対していません」
公共施設や飲食店などの建物の中を原則禁煙とする罰則付きの受動喫煙防止条例制定を目指す東京都は、昨年パブリックコメントを実施した。その結果は条例制定に「賛成」が6464件だったのに対し、「反対」「一部反対」は8192件で賛成を上回った。反対の理由としては、「喫煙者に厳しすぎる」「店が決めればよいこと」「共存できる体制をはかるべきだ」との意見があった。
飲食店の現場ではどう受け止めているのか。居酒屋、スナックなどを中心に約8000軒の組合員を抱える東京都飲食業生活衛生同業組合の宇都野知之常務理事は「怒鳴り声の脅迫電話が何回もかかってきた」と話す。
――受動喫煙防止についてどう受け止めていますか。
「誤解されている方が多いのですが、私たちは受動喫煙防止に反対していません。学校や病院など公共施設での禁煙には賛成です。でも、我々飲食店の商売はお客様が第一、お客様に選択していただくものです。個人が営む店ですからそれぞれスタイルが違います。それが個性で、だから面白いのです。うちは10坪から20坪の家族経営の店が6~7割。ほとんどが借り店舗で、売り上げは年間1000~2000万円です。その中には吸える店もあれば、禁煙の店もあっていいじゃないですか。それを公共施設のように一律に法律で規制するというのは、おかしいでしょう」
――それでは受動喫煙防止にはどう取り組んできたのですか。
「健康増進法が成立した時から、もう20年近くわれわれは東京都と一緒になって、禁煙、分煙、喫煙可といった店の喫煙環境の表示について議論してきました。飲食店が貼りやすいステッカーやボードのアイデアを出したり、できたステッカーを持って一軒一軒飲食店を回り、店頭表示の協力をあおいだりしてきました」
――ステッカーはどれぐらい普及しているのですか。
「最初はなかなか協力してもらえなかったのですが、喫煙に対する風当たりが強くなるとともに増えて、今は6割くらいですかね」
――厚労省の案では、新規開店は面積に関わらず一切全面禁煙とありますね。
「喫煙できるのは営業中の店だけ、ということです。まるで、この法案はすでに営業しているみなさんには関係ありませんから、安心してくださいと言わんばかりです。既存の店主と将来の店主を分断して話を進めようというのは姑息に思いますよ」
――ところで宇都野さん、たばこは?
「あまり吸わないんです」