受動喫煙対策はどうあるべきなのか。国は全面禁煙を求める飲食店の対象を当初30平方メートルとしていたが、自民党内の議論の結果、100平方メートルに緩和された。飲食店経営者はほっと一息ついたようだが、「怒鳴り声の脅迫電話があった」というほど規制推進派の怒りは根強い。非喫煙者と喫煙者がいがみ合う構図が、このまま続いてもいいのだろうか――。

なぜ新聞各紙は「反対」の大合唱なのか?

厚生労働省の公表した「受動喫煙対策」について、ほとんどの新聞が骨抜きになったと反対の論陣を張っている。

写真=iStock.com/Mauro_Scarone

厚労省が1月30日に公表した健康増進法改正案の骨子では、店舗面積150平方メートル超の飲食店を原則禁煙とし、加熱式たばこも規制対象に盛り込むことになった。ただし例外として150平方メートル以下の飲食店は「喫煙」「分煙」を表示すれば店内での喫煙を認めるとする。

当初案では30平方メートル超を原則禁煙としていたことから、各紙はいずれも「大幅な後退」と怒りの論調だ。その後、厚労省は規制推進派の主張を受けて、喫煙を例外的に認める基準を「客席100平方メートル以下」とする修正案を自民党部会に提出している。政府は3月上旬に閣議決定し、改正法案を今国会に提出する見込みだ。

そもそも喫煙者から学校や病院など公共施設での全面禁煙に異論を唱える声はほとんどない。しかし、バーやスナック、やきとり屋などまで一律に規制する必要があるのだろうか。それほど厳しい規制が必要なほどたばこが有害ならば、たばこの販売を国が許していること自体がおかしいではないか。

もちろん受動喫煙対策は重要だが、飲食店経営者などの声を取り上げたり、規制に慎重さを求めたりする社説がひとつも見当たらないのは、薄気味悪ささえ感じる。飲食店などは全面禁煙になれば、「売り上げが減る」と反対している。一方、規制推進派は足並みを揃えて禁煙にすれば、逃げていた客の利用が増えることで、むしろ売り上げ増になると主張する。話は噛み合わず、平行線だ。問われるべきは売り上げの増減ではなく、一律の法規制の是非であるはずだ。

ランチタイムを禁煙にしている飲食店は多い。昼休みという限られた時間内で客の回転率をあげるためだ。現在、日本の喫煙率は全年齢で男28.2%、女9.0%と20年前のほぼ半分(56.1%、14.5%)。喫煙者の減少にあわせて、自主的に禁煙を選択する店が増えたように、これからノンスモーキングの店は多くなるだろう。自然なことだ。