「○か×で答えを求めず、意見として答えられる質問を投げる」のも重要である。たとえば部下がある店舗の責任者で、売り上げが落ちている場合、その事実を叱る前に、「売り上げをどう思う?」と感想をたずねる形で聞く。相手は○×ではなく、自分の意思を自分の言葉で伝えられるので圧迫感が軽減するはずだ。そして結果的に「売り上げの減少を防ぐには仕入れ価格を下げる」など、部下自ら結論にたどり着くことができれば、叱られた印象は残りにくい。

普段から説教できる機会をつくっておく

一番有効で用意周到な方法は、まず叱りたいと思っている部下が苦手な分野を見つける。そして「帰社する際、机に書類を残さない」のように反論しづらいルールをひとつだけ設定し、普段から説教できる機会をつくっておくのだ。部下も「叱られているけれど、無理を言われているわけではない」という意識になるため、説教をパワハラと感じさせない関係を築くことができる。さらに適用される者が少ないため、批判を受けにくい。

会社側も緊急時の人件費削除に備え、「きびしく叱責できる人材の確保は必要悪だ」という方針の下、その手の上司を重宝することがある。そうした経営側の意図を感じた場合、部下を叱る前後に経営者や幹部の理解を得ておこう。いざ裁判になったときには、「会社や社長の意向だった」と主張できる。

野澤 隆
弁護士
1975年、東京都大田区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士秘書などを経て、2003年、司法試験合格、08年、城南中央法律事務所を開設。