大学が個性を競い合う時代に

大学が個性に合わせた学生を求める動きは、早慶以外でも起きている。例えば京都大学は、書類やセンター試験を通して高校での実績や能力を総合的に評価する「特色入試」を実施している。

「京都大学の山極壽一総長は、京大は研究者を養成するのがミッションだと言っています。研究者に必要な志を見るために、高校時代の学業活動報告書や大学入学後の学びの設計書を提出させ、面接をしているのです」(小林氏)

ほかには国際基督教大学は講義を聴いて設問に回答する試験を、上智大学はアカデミック英語能力判定試験(TEAP)の得点を提出する入試形式を設けている。

大学が自らの個性や役割に合った学生を求める入試は、欧米でも行われている。例えば英オックスフォード大学は、大学に合った学生を選ぶため約1万6000人の受験生全員と面接を行う。面接では「志望理由」を詳しく聞くため、「偏差値が高いから」では門前払いされてしまう。

AO・推薦入試の増加は全国的な傾向

日本国内で見ると、2000年度から2015年度までの間に、大学全体におけるAO入試の入学者数は1.4%から8.8%、推薦入試は31.7%から34.7%に増加している(文部科学省)。AO・推薦入試の増加は全国的な傾向だ。

その一方で、AO・推薦入試入学者は一般入試入学者より学力が劣るのではないかという懸念もしばしば抱かれる。これに対して小林氏は「今後は、AOでも推薦でも学力の3要素を見る形になる」と語る。

「学力の3要素」とは、(1)知識・技能の確実な習得 (2)[(1)を基にした]思考力、判断力、表現力 (3)主体性を持って多様な人と協働して学ぶ態度の3つを指す。文部科学省が取り組んでいる高大接続改革で、この3要素をすべての入試区分で見ることが目指されているのだ。大学には、学力の評価方法をアドミッションポリシーや募集要項で明示することが求められるようになる。

「今まで、学力とは知識と技能を指していましたが、知識・技能をもとに答えが定まらない問題に解を出す力や、主体性・多様性・協働性も見ていきます」(小林氏)