大型店では「宝探し」になってしまう

――工藤さんは書店の大型化を引っ張ってきた第一人者です。「大型書店は化石になっている」と言う発言に、書店経営者がショックを受けるのはわかる気がします。

【工藤】目当ての本を探すというだけでは、たしかにネット書店のほうが便利です。われわれの店は、できるだけ本を探しやすい構造にしていますが、それでも「どこにあるかわからない」とご指摘を受けることがあります。大型店にある検索機を使えば、その本は何階のどの棚にあるか、パッと出てきます。でも、前のお客様が手に取った本を違う場所に戻されたら、もうわからなくなってしまう。要するに「宝探し」になってしまうんです。

探している本の近くに来たらスマホが反応する、といった具合に、もっと便利な装置を開発しないといけません。また探すことが楽しいという仕掛けも必要です。「ポケモンGO」が参考になるはずです。本の在庫がすぐわかり、どこの棚にあるかも確認できる。そしてお客さまに来店していただき、中身を見てから買っていただく。アマゾンでは、中身までしっかり見られるわけじゃありませんからね。

来店さえしていただければ、お目当ての本を買う前に「ちょっと待てよ、こっちの本もいいぞ」という気付きも生まれます。だから、リアル書店には足を運んでいただけるだけの「付加価値」を感じてもらう必要があると思っています。

当社では「honto」というネット書店のグループを持っていて、ネットとリアルの融合については、アマゾンよりも何年も前から進めています。ネットで注文いただければ店舗に取り寄せることもできるし、ご自宅まで送ることもできる。ただし、来店いただくだけの「付加価値」という点では、まだ取り組みが足りないと思っています。

丸善ジュンク堂書店・工藤恭孝会長

ネット書店は沖縄本島に在庫100万冊をもてるか

――大型店の役割はこれからどうなるのでしょうか。

【工藤】私どもの場合、旗艦店である池袋本店の在庫量が特別に多いんです。ロングテール(販売量の少ない多くのアイテム)の部分は、あそこから出荷しているんです。

だから出版社によっては、自社の倉庫に常備していないような稀少本まで、池袋本店に預けてくれています。要するに出版社に頼んでも出荷してもらえないような本まで持っているんです。だからお客様が探している本のヒット率は、アマゾンよりもわれわれのほうがずっと高いはずです。アマゾンが「バックオーダー」、いわゆる取り寄せ委注文をやめてしまったのは、うちだったら1日で届くのに、アマゾンでは3週間もかかるのか、と言われるのが嫌だからでしょう。

それから沖縄の場合、うちは国内で4番目に多い100万冊の在庫をもつ那覇店がありますから、離島でも翌日には届けられます。ネット書店が宅配便で本州から送ると、1000円以上の費用がかかる上に、2日以上かかってしまう。それではネット書店のみなさんが沖縄にそれだけの在庫をもつかといえば、それは考えづらいでしょう。