雇用削減、低賃金、そして地域経済の衰退

アマゾンが従業員の雇用や賃金を抑圧しているという情報は、米国ではこれまで多数報告されてきました。アマゾンはこれまでリテール部門において10万人以上削減しているともいわれており、そのペースも、アマゾンが成長するにつれて年々加速しているとの報告もあります。

アマゾンの配送倉庫に勤務する労働者は、FBAに関わる業務がかなりの重労働にもかかわらず、その同一地域にある他の配送倉庫に勤務する労働者に比べて、平均で15%低い賃金で雇われているとの指摘もなされています。

また、その多くが有期雇用や季節雇用になっているとのことです。この雇用形態に対しては、労働者が被る業務に関係する労災の責任を回避するためのものであり、労働者による直接雇用および、よい雇用条件を求める声を抑えるものであるとの批判もなされています。とくにアマゾンは季節雇用への依存度を強めており、米国の30都市では、フリーランス・ドライバーがアプリから指示を受け、配送を行ない、それぞれの配送ごとに比較的低額の報酬を受け取る、という仕組みに移行しつつあるとも指摘されています。

所得格差を拡大させるひとつの要因に

その背景にあるのは、配送倉庫におけるオートメーション化です。最新のフルフィルメントセンターではロボットが設置されていますし、将来的にはドローンによる配達も始まります。正社員を雇用しない傾向はますます強くなっていくのではないでしょうか。

アマゾン側は、「事業コストを抑えれば、その効果は顧客に還元できる」としています。しかしその背後には、労働者との利益配分の問題があります。さらにいえば、一握りの幹部や大株主に対しては絶大な富をもたらしており、所得格差を拡大させるひとつの要因ともいえるでしょう。

また、地域経済を弱体化させているという批判もあります。まず取り上げなくてはならないのは、アマゾンの成長によって、地元に根付いた小売業者が次々に閉店に追い込まれているという指摘です。前述の通り、ILSRの集計によれば、2015年までに1億3500万平方フィート以上の物件が空室になったとされています。