今月1日に行われた首班指名選挙では、「魔の3回生」の1人である渡辺孝一衆院議員の投じた1票が無効となった。無効となった原因は、自分の名前を書き忘れたこと。渡辺氏は今回を含め3回連続で自民党の比例北海道ブロックの名簿上位で当選した議員だ。

与党議員にとって自分たちの首相に選ぶ1票はなによりも大切な仕事。3度目の首班指名でも間違いを犯す議員が、国会で質問をすることで急速に成長するとは思えない。

与党議員の仕事は「出来レース質問」ではない

ここで、なぜ質問時間が野党に優位に配分されているのかを考えてみたい。理由は2つある。

まずは国会対策での「思いやり」。与党は、法案をできるだけ早く、できるだけ正常な形で成立させたい。このため「われわれの質問時間を削り野党に譲る」というカードを野党側に切って、法案採決の日時の約束を取り付けたり、採決時に牛歩戦術などの抵抗をしないように求めたりする。これが常態化して今の慣例になっている。

安倍政権は「1強」確立以来、国会運営などで野党の理解を得ようとする努力がおろそかになっている。重要法案では強行採決を繰り返している。野党側の理解を得る必要性を感じなくなった政権が、野党側に譲歩してきた関連を見直そうと考えるのは、ある意味で必然かもしれない。しかし、少数意見に耳を傾ける時間を減らそうというのは安倍首相の言う「謙虚に」とは正反対の発想だ。

もうひとつ、きわめて重要な論点がある。日本の政策決定システムでは与党と野党の役割は決定的に違う、ということだ。国会で1本の法律を成立させる場合には、以下のような流れとなる。

(1)政府が法案づくりに着手
(2)与党と意見交換、質疑
(3)与党の了承のもと法案を国会提出
(4)国会で質疑
(5)国会で採決、成立

ここでの与党議員の主な仕事は、政府と議論して法案をつくりあげ、国会に提出することだ。国会に法案を提出した段階で、党として賛成することは決まっており、法案づくりにも関与しているのだから、国会提出後に質問すべきことはあまりないはずだ。質問しても、答弁が最初から分かる「出来レース」のようなやりとりになってしまう。