冷却に必要な水は、1日にたった約300ミリリットル。水は飲用でなくてもいいため、清潔な水の入手が簡単ではない地域でも使用しやすい。機能する条件として、外気の湿度が65%以下の暑い日である必要がある。コンテナのような形態のフタから水を注ぎ、貯水タンクを満たす。
「EV-8」の容量は60リットル程度だ。日本で一人暮らし用に使われる冷蔵庫が80~120リットルサイズなので、あまり大容量とはいえないが、冷蔵保存が必要な食材だけでも入れておける。また、折りたたんで持ち運ぶこともできるので、露店で飲食物を販売する際にも役に立つ。
開発にかかる費用のために、Evaptainersでは補助金や助成金を活用して約5500万円を調達したという。インフラ整備が進まず、政治も行政も安定しない国や地域に住む人々を助けるために、このプロジェクトはスタートした。途上国の特殊なニーズにも答えつつ、キャンプなどのアウトドア用途で使いたい人向けにも商品を販売していくとのことだ。
首都ナイロビでも冷蔵庫なしの人は多数
筆者は以前ケニアの首都ナイロビにて、20名程度に「冷蔵庫を持っているか?」と質問し、4割程度から「持っていない」と回答された経験がある。ナイロビ市内はビルが立ち並び、東アフリカの中でも有数の繁栄を見せている。このあたりに住んでいる人であれば、冷蔵庫は持っているだろうと考えていたので、とても驚いた。都市に住んでいても、電気にアクセスできない人はかなりの数で存在しているようだ。
食品の保存ができなければ、毎日買い物に行くしかない。だが、公共交通機関も未発達の地域であれば、日々の買い出しだけで重労働になってしまう。電力を必要としない冷蔵庫の存在は、アフリカの人々をその作業から開放する役目を果たせるかもしれない。空いた時間で、別の仕事に取り組むこともできるようになる。
このような特殊なニーズをとらえ、彼らが本当に必要としているものを提供できるかが、アフリカで事業を成功するうえでの鍵になる。先進国のものをそのまま横流しするだけでは、彼らのハートはつかめない。