ほんの20年ほどで様変わりした日本の葬式。都市部では個性化、簡素化が進み、わずらわしさは減ったもののなんでも葬儀業者任せとなり費用はかさむ。一体、いくらかかるのか? ズバリ教えます。

 

簡素で個性的な葬儀が人気を集めている

2000年あたりを境に、葬儀のあり方が簡素化と個性化の方向へ変わりつつある。

たとえば、首都圏では伝統的な「白木の祭壇」を使うお葬式が減り、かわりに生花で飾りつける「生花祭壇」が主流になっている。白木の祭壇は使い回すのが基本だが、生花祭壇はオーダーメードであり、好みの花や色を取り入れて「その人らしさ」を表現できるからだ。

また、家族・親族だけではなく仕事関係など知人全般に来ていただく「一般葬」が相対的に少なくなり、ごく親しい人と家族だけで行う「家族葬」「密葬」が増加傾向にある。

一般葬の場合、会葬者の約7割は、遺族とは面識のない人だといわれている。遺族は、こうした一般会葬者への通夜振る舞いや返礼品の準備、連絡、挨拶などの手間に忙殺され、故人を悼む余裕もないほど疲れきってしまう。そこで、5~10人ほどの遺族だけが棺を囲み、ゆっくりと故人を送る家族葬や、遺族にごく近しい知人だけを加えた密葬の形式をとる家族が増えたのである。

なお、密葬のあとには一般会葬者を対象にした「本葬」を執り行うのが本来の姿だが、最近は密葬だけで済ませることが多い。

家族葬や密葬以上にシンプルな「火葬のみ」の葬儀も、東京に限れば、すでに全体の2割を超えたといわれている。たとえば、郷里から老親を引き取り、東京の病院で看取ったものの、近所には知人も親戚もいないので、とりあえず火葬だけを済ませて、お骨にしてから改めて郷里で葬式を行うというパターンである。

病気治療に費用がかかりすぎ、葬儀にまではとてもお金をまわせないので、やむをえず火葬だけで済ませるという家族も増えている。葬儀など宗教儀礼を一切したくないという信念を持っている人が、火葬のみを選択するケースもある。