鈴木さんのケースのように、さかのぼって請求する場合は、「初診日から1年半の時点の診断書」と「現状の診断書」の2つの診断書を依頼する。診断書ができあがったら、診断書の内容に不備や記載漏れがないかを確認したうえで、年金事務所に年金請求書、住民票や戸籍などの必要書類とともに提出する。

請求後、3カ月半で結果が届く。鈴木さんの場合は、私が想定していたとおり、初診日から1年半の時点では3級、現状では2級と認められ、その1カ月後、さかのぼって300万円が入金された。

鈴木さんの場合は、はっきり言って最高の形で受給ができた。たとえば、初診日から1年半の時点でたまたま復職した時にフルタイムで仕事ができていたような場合には、「さかのぼり受給」が認められないこともある。ただ、その場合でも、少なくとも現状で仕事ができない状態であれば、医師の診断書の評価によって、仕事ができなかった期間に応じて3級はもちろん、2級と認められる可能性がある。

もらった後に気をつけること

鈴木さんの場合、仕事を探せるまで回復したら、雇用保険からの失業給付も受けられる。あまり知られていないが、障害年金と失業給付は、重ねて受給することができる。また、失業給付は障害者手帳を持っている場合、1年近く受給できる。さらに鈴木さんは「障害者雇用で働きたい」という意思があったが、もし障害者雇用で仕事が決まって働き出しても、診断書により「労働に支障が出ている状態」と認められれば、フルタイムで仕事をしながら、障害厚生年金3級を受給しつづけることができる。

もうひとつ、障害年金は、多くの場合で、数年に一度診断書を再度提出して、再認定を受ける必要があることも知っておこう。だいたい1~5年の範囲で診断書を提出する。そのときの認定により等級が変わったり、支給停止になったりすることがある。

不服申立てのススメ

障害年金では、明らかに誤りであるとしか思えない認定が普通にある。また、同じ診断書でも2級となったり、3級となったりする。請求が数十年後になってしまい、初診日のカルテが廃棄されている場合は、初診日を証明することも難しくなる。そうなると初診日が特定できないとされ、障害年金がもらえないことも多い。