素晴らしい経歴イコール素晴らしい人格とは限らない

およそ政治家らしくない、幼い顔だちだが、衆院選で2度当選しただけで「世界はオレ中心に動いている」と思い込んでいる――そんな風情の武藤貴也衆院議員は、初当選時から国会議員の中でも浮いた存在だった。

写真=時事通信フォト

何といっても協調性がない。目立つ場所で発言するが、その内容が過激すぎる。事実、自民党滋賀県連の中でも、「あいつとは言葉が通じない」とも言われ、武藤氏には親しい友人がいなかったと聞く。2015年8月に金銭トラブルで自民党離党を余儀なくされ、未成年の男性を買春したことを週刊文春で報じられたときも、同情の声は出なかった。

信頼度を見抜くうえで、経歴・学歴に頼る人も多いだろう。ただ、素晴らしい経歴イコール素晴らしい人格とは限らない。

2016年6月に政治資金の私的流用疑惑が浮上、粘った甲斐なく辞任した前東京都知事の舛添要一氏は、6カ国語を操る新進気鋭の国際政治学者として1980年代にメディアに登場。その切れのいい物言いと元東京大学助教授という華やかな肩書に、テレビをはじめとしたメディアは飛びついた。

しかし、すでに新党改革時代から政治資金の私的流用を週刊誌で書かれ、厚労相時代から吝嗇家だとの噂も絶えなかった。学者としての業績も怪しい。東大を退官後に舛添氏の訳書として上梓された政治学の翻訳本が、実は当時の東大大学院生が丸々手掛けたものだったことを、当の大学院生が公にしている。

同様に東大法学部卒で元検事という素晴らしい経歴の持ち主ながら、その言動にげんなりさせられたのがガソリーヌこと山尾志桜里民進党政調会長だ。国会で「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログを披露して安倍晋三首相に待機児童問題を迫ったことで名を上げたため、民進党結党の際に政調会長に抜擢された。

ところが山尾氏が総支部長を務めていた「民主党愛知県第七区総支部」の12年の収支報告書に、ガソリン購入代として地球5周の走行分に当たる約230万円が計上されていた問題が発覚。山尾氏は元秘書が架空の代金を計上した疑いがあると釈明した。もし本当なら業務上横領罪に問われかねないが、山尾氏はこの元秘書に連絡すら取っていなかった。

甘利明前経済再生担当相の金銭授受疑惑では「秘書のやったことについて、本人の責任が免れるわけではない」と厳しく批判したにもかかわらず、自分に対しては大甘のまま、政調会長の座に居座り続けている。

他人には攻撃的なのに、いざ自分が指弾されると、他人に責任を押し付けて逃げるのはいただけない。

「もっとも永田町にひどい秘書が少なくないのは事実。議員にとって、秘書の監督は今後の最重要課題でしょう。しかし、特に若いときから人に担がれてきた2世、3世議員の多くは、企業の課長級以下のマネジメント能力しかない。逆に官僚出身者は、役所時代の手下と同じ感覚で秘書をこき使って、その結果人心が離れるパターンが多い」(ベテラン秘書)

経歴がアテにならないなら、「血筋」はどうか。企業社会では、金持ちのボンボンは世間知らず、甘ったれなどとレッテルを張られることが多いが、政治の世界も大差ない。