7月27日午後3時。民進党の蓮舫代表が辞任を表明した。「遅きに失した」「何を今さら」と評判は、かんばしくなく、民進党は前身の民主党時代から数えて何度目かの「結党以来の危機」を迎えている。しかし「ポスト蓮舫」を選ぶ道は、安倍自民党に対して有効な一打となる可能性もある。「代表交代」という選択肢をもつ民進党に対し、その選択肢すらない自民党の苦悩は深い――。
記者会見で辞任を表明した民進党の蓮舫代表=7月27日、国会内(写真=時事通信フォト)

自分の能力がないのに気づいた?

「きのう(26日)1日、人事に向けてゆっくりと考えました。どうすれば、私たちが皆さんに託していただける民進党と思っていただけるのか。そのとき、人事ではなくて、私自身をもう一度見つめ直さなければいけないと思いました」

辞任会見で蓮舫氏は決断の経緯を、こう語っている。2日前の25日、野田佳彦幹事長が辞任を表明。それを受けて蓮舫氏は幹事長以下の人事を断行する手はずになっていただけに、代表が辞任するということは驚きのできごとだった。「部下の人事を考えていたら、自分が能力がないのに気づいた」と言っているのも同然の説明は、「素直」と言えばその通りだが、痛々しい。

実際のところ、蓮舫氏に批判的な幹部が、幹事長以下の人事断行に露骨な妨害行為をしたという。それで、心が折れてしまったのだろうか。民主党のころから「内紛はお家芸」と言われた体質は、今も変わらない。

しかし、この蓮舫氏の発言は、ある意味で自民党に反転攻勢をかける布石を打っているとも言える。

ガバナンスが効いていることが裏目に

7月2日、東京都議選で惨敗して以来、自民党は深刻な逆風にさらされている。内閣支持率は急降下。中でも、不支持の理由として「安倍晋三首相を信頼できない」が急増しているという深刻な事態であることは7月25日にアップした「安倍政権を苦しめる『魔の月曜日』の深刻」や同月12日にアップした「もう末期"世論調査"でみる安倍内閣の体力」で報じた通りだ。

安倍氏は、8月3日の内閣改造で支持率をV字回復させたいと考えている。内閣と党の顔触れを一新し、浮上のきっかけをつかみたいところだ。しかし、安倍内閣の支持が下がっている最大の要因は、安倍氏自身にある。冒頭紹介した「人事ではなくて、私自身をもう一度見つめ直さなければいけない」という蓮舫氏の言葉は、そのまま安倍氏にも当てはまる。安倍氏はそのままで、下の閣僚や党執行部の顔触れを変えても、清新なイメージを国民に与えるのは難しい。

支持率が危険水域に達している現状では、安倍氏が退陣して自民党総裁選を行うという選択肢もないわけではないのだが、自民党は「幸か不幸か」党執行部のガバナンスが効いている。内閣では菅義偉官房長官、党では二階俊博幹事長がにらみをきかせていて「安倍おろし」の空気が広がることはない。政権与党としての責任感から、そう簡単に首相を代えるわけにはいかないという認識が党内で共有されているという側面もある。そして、そもそも安倍氏自身、辞任する気がない。