人間関係に若干残ったしこり

高校人脈の強いつながりに、転勤者はどう溶け込んでいけばいいのか。単刀直入に聞いた。

座談会で司会を務めた筆者(中央)(撮影・佐藤桂一)
【Q】高校人脈とつながる上での注意点は。

福岡OB「よく私立の福岡大学の付属高校と間違われます。タブーって訳じゃないですが、それは『違いますよ』ってことになる」

別のOBは「学校名を間違えたらアウトだと思う。あと、卒業した有名人も。例えば修猷館のOBに『タモリさんと一緒ですね』なんて言うと、話が進まない。商談なら、そこで終わりかもしれない」とアドバイスする。

ハッとした。

西日本新聞(福岡都市圏版)とqBizでは、福岡高校の100年の歩みに焦点を当てた連載「福高讃歌」を掲載している。ノーベル賞受賞もあり、「ふっこうばかり」と思われていないか。

目を閉じたまま、質問に1人だけ手を挙げる参加者(撮影・佐藤桂一)

そこで、福岡高校以外のOB、OGに目を閉じてもらい、挙手を求めた。

【Q】次に取り上げられるのは、わが母校だと思っている。

手が挙がったのは1人。初めから座談会メンバーとして参加していた修猷館OBだった。

そのほかのOB、OGからは「もう母校は何度も取り上げられてきたから十分」といった“上から目線”の声が。

自分の母校が1番?の問いには、参加者全員が手を挙げた(撮影・佐藤桂一)

手を挙げた修猷館OBにさらに聞いた。

【Q】むしろ、福岡高校より先に母校が取り上げられるべきか。

これには、「そこまでは望まない」と謙虚に答えた。その理由をさらに問うと。

「修猷館にはアンチが多いから……」

入学の難しさで御三家の「トップ」(上尾宏・英進館取締役教務本部長)に立ち、一目置かれることも多いためか。OBは周囲の目に配慮をみせたようだ。

そんな“余裕”の態度に、「なんだよ結局、(目立つのは)修猷館かよ」「だいたい、福岡の学校が多くないか」「筑後、筑豊は1校ずつだ」と再びクレームが。

そこで、最後に全員に尋ねた。

【Q】結局、自分にとって母校が一番素晴らしいと思っている。

「はいっ」

今度は全員が手を挙げた。そして、人間関係に若干のしこりを残したまま、座談会は無事に閉会した。

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異例の「貸し切り」に協力し、2時間以上に及んだトークを黙って聞いていてくれた屋台の店主さんは鹿児島県の出身だった。お礼を伝えた上で、こんな質問をした。

【Q】鹿児島も大学より高校の人脈が強いんですか。

店主「はい。田舎ですから」

帰り際に飛び出したまさかの一言。そう。福岡もローカルなのである。核心を突いた一撃によろけながら、私たちは会場を後にした。(取材協力はジビエ料理屋台「情熱の千鳥足」)

(記者:吉武和彦)
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