長野県諏訪市のご当地キャラ「諏訪姫」が人気を集めている。考案したのは地元の金型メーカー。主力製品は自動車やカメラの部品だったが、「諏訪姫」のフィギュアが人気を博し、業容を拡大しつつある。苦戦する「ゆるキャラ」も多いなかで、なぜ成功したのだろうか――。

リーマンショックで仕事が激減

諏訪湖のほとりにある高島城。そこに住むという設定の萌え系キャラクター「諏訪姫」のフィギュアが人気を集めている。このキャラクターを考案したのは諏訪市に本社を構えるピーエムオフィスエーという、従業員30人ほどの中小企業だ。同社は自動車やカメラ向けの部品をつくる金型メーカーで、フィギュアとは全く畑違いの会社だったが、このフィギュアが同社の窮地を救うことになった。

長野県諏訪市のご当地キャラ「諏訪姫」。ご当地キャラは長野県内のほかの自治体にも広がっている。

「フィギュアを始めて5年ぐらいになりますが、シリーズ全体ではすでに20万体以上売っています。その結果、フィギュアを含めたホビー関連の売り上げがどんどん増え、今では約5億円の年間売上高の半分を占めるほどになっています」(ピーエムオフィスエー・山口晃社長)

1967年生まれの山口社長は松本市の高校を卒業後、セイコーエプソンに入社。しかし、自分で事業を始めたいと、6年後に退社。中小企業2社で修行し、2000年に友人と2人でピーエムオフィスエーを設立した。始めた事業は金型の設計。アパートの1室を借りながら、デンソーやアイシン精機の下請けから仕事をもらって順調に売り上げを伸ばした。06年には本社と工場を建設し、金型の製造と自動車やカメラ部品の製造へと業容を拡大した。

ところが、2008年のリーマンショックで仕事が激減してしまった。このままではダメだと考えた山口社長は新たなビジネスを始めることを決意。そこで、どんなビジネスがいいかと展示会などを見て回ったという。

「その時に一番活気があったのがオタク業界、つまりホビーの業界だったのです。非常に人が多く、しかも、1万、2万円と来場者がお金を投げ捨てるような感じで商品を買っていたのです」(山口社長)

いつか自社ブランドを立ち上げたいと考えていた山口社長は、そこで「PLUM」というブランドをつくり、ゲームに登場するキャラクターのフィギュアやプラモデルの製造販売を始めることにした。プラモデルは部品点数が多いので、機械の稼働率を大きく上げることができる。このため固定費が下がり、既存の自動車部品などのコストも下げることができる。