では、それぞれどんな意味を持つのかだが、まず「使う貯蓄(口座)」は、1カ月生活するためのお金、たとえば住居費や食費、生活日用品費など必要経費用の蓄えとなる。加えて、冠婚葬祭などの急な出費や、突然の病気で医療にかかる費用、車や家の修理代などに備えるものとなる。
また、ちょっと贅沢をして食費や被服費を多く使った月でも、1.5カ月分という余裕があれば、それを補えるという心理的余裕があることも大きなメリット。ただし、毎月入るお金以上に支出をした翌月には、うまくやり繰りして元に戻す努力も欠かせない。
「貯める貯蓄(口座)」で最も重要となるのは「生活防衛資金」としての手取り月収6カ月分。これは急に仕事を失った、入院したなど、収入が途絶えたり減ったりしたときの備えとなる。そんな“いざ”というとき、6カ月あれば立て直せると見込んでのことだ。
これらに加え、住宅購入の頭金や自動車購入資金、子供の入学金など、明らかに想定できる大きな出費に備えての貯金は、投資を考える前に確実に備えておきたい。
さて、金子さんの場合、相談時の貯金額は、積立型投資口座の残高56万円を考えなければ180万円にまで減っていた。夫と妻の手取り月収を合わせると33万5000円だから、使う口座と生活防衛資金だけでもその7.5倍の251万2500円が必要となる。つまり不足額は71万2500円。これを貯めるのが喫緊の課題だった。
幸いだったのは、手取り月収に占める流動費の割合が35%と理想的なものであったこと。じつは、よくよく話を聞いてみると、妻は主婦向け雑誌の節約記事を読むのが大好きで、節約意識が高かったのだ。その原動力となっていたのは、「子供の教育費はなんとしてでも貯めなければいけない」という想い。夫も月2万円の小遣いに対し不満を漏らすこともなかった。
だから、積立型投資をやめ、通信費を見直しただけでも家計は大幅に改善。毎月5万円ほどの貯蓄ができるようになったので、1年あまりで投資も再開できそう。その間に、もう一度投資について勉強しなおし、自分なりの投資法を固めていきたい考えだ。
マイエフピー代表取締役社長。「消費」「浪費」「投資」で仕分ける家計管理の考え方が大反響を呼び、庶民派ファイナンシャルプランナーとして、1万件以上の赤字家計を再生。著書に『年収200万円からの貯金生活宣言』シリーズ、『「貧乏老後」に泣く人、「安心老後」で笑う人』などベストセラー多数。