PCとスマホで仕事を完結させるデジタル派が増えている昨今。数少ない手書きで行う作業のひとつが「メモ」だ。ただの書き写しではなく、次のアイデアを生む価値あるメモはどうすればできるのか。

あなたのメモはあとで見返せるか

未来の自分を信頼しない──それが仕事の質を上げるメモの極意です。アイデアを考えるとき、企画を練るときやプレゼンの準備、どんなメモでも自分の記憶を信じず、将来の自分の役に立つように意識するだけで、役立ち率が劇的にあがるんです。

POOL inc. CEO&クリエイティブディレクター 小西利行さん

では、「使えないメモ」とはどんなものでしょうか。駄目なメモでありがちなのは、何を書いているのか、いつ書いたのかがわからない、ラインを引きすぎたり印をつけすぎて、何が重要なのか見分けがつかないといったものです。

一番意味のないメモは、ホワイトボードの板書やスライドの内容をそのまま書き写したり、話し手が言ったことをそのまま書きとる「お勉強」のようなメモではないでしょうか。そんなメモからは卒業しないといけません。

じつは、偉そうにいっている私も、広告会社に入社して4年くらいはずっと駄目なメモを取っていました。たとえば、ある商品の販促の会議でのこと。前に立って話している人の言葉をメモしていた私は、隣でベテラン社員がつぶやいた「この商品のターゲットは子供を持つ女性なんじゃない?」という着眼点に、「そうですね」とただ相槌を打つだけでした。でもメモを取るべきは、本来そういう会話などの「アイデアのかけら」なんですよね。

そこから脱却できたのは、意識的にメモの取り方を変えたから。具体的には、自分があとで見返すことを想像して書く「未来メモ」をつくるようになってからですね。それがきっかけで大きな案件を任されるようになり、仕事に自信もつき、結果的に独立して働けるようになりました。

今のアイデアを未来の自分に託す

では、未来メモとは何か。それは、読み返して発見のあるメモです。そのためにも、まずはメモを取ることが大切です。素晴らしいアイデアも、仕事に使えそうなネタも「絶対に忘れない」と思ったその1分後には忘れてしまうのが人というもの。飲み会でいい話を聞いても、すぐ忘れてしまいます。

また、新しいアイデアは「自分の経験」からしか出てきません。アメリカの実業家ジェームス・W・ヤングの「新しいアイデアとは、既存のアイデアを組み合わせたものである」という言葉を知っている人も多いでしょう。でも、やみくもに情報を組み合わせても、新しいアイデアは生まれません。

私の場合、思考に行き詰まったときは過去の自分のメモを見ます。メモは過去の自分の思考や感性と出合わせてくれる。過去の自分と今の情報を掛け合わせると、精度の高いアイデアが生まれるのです。

あとで役立つメモのつくり方はとてもシンプル。かならず日付を書く。○をつける。因果関係を意識して「↓」(矢印)を使う。吹き出しで、視覚的にイメージを付ける。目的ごとにアイデアを繋げる。このルールを自分でやり続けることができれば、見返したときにいつでも情報を引き出すことができるのです。