原発が再稼働すれば収益改善できる
政府は2014年のエネルギー基本計画で、原発を重要な「ベースロード電源」として位置づけ、30年度の総発電量に占める割合(電源構成)を20~22%とすることを目指している。東電の再建計画でも柏崎刈羽原発の6、7号機が再稼働すれば、営業利益が年1000億円増えるとされていて、大幅な収益改善が見込める。
ところが今年2月、柏崎刈羽原発の「免震重要棟」で耐震不足の可能性があることが明らかになった。従来は「長周期の一部の揺れを除く、震度7でも耐えられる」としていただけに、地元新潟県の米山隆一知事は態度を硬化させ、再稼働の判断に「数年かかる」と述べ、再稼働の見通しは立っていない。
また、新たな再建計画では、「2020年代初頭に統合的運用を担う共同事業体を設ける」として他電力との共同事業に期限を設けた。政府は、欧米に比べて割高な送配電事業の効率化を進めるため、2020年までに大手電力会社の送配電部門を切り離す「発送電分離」を計画しており、期限はこれを見据えたものだろう。しかし、他の電力会社にしてみれば、原発事故処理を抱え、国が過半数を超える株式を保有する東電との連携には二の足を踏まざるをえない。
さらに計画には、中部電力との火力発電事業の経営統合も盛り込まれており、3月28日には、両社が火力発電事業の完全統合で基本合意したことを正式に発表した。両社は2015年に折半出資の「JERA」を設立し、燃料調達部門などは統合している。東電は15カ所(発電能力計4400万キロワット)、中部電力は9カ所(同2400万キロワット)の火力発電所を持ち、統合後は国内火力発電能力の約4割を占める。再建計画のなかで、具体性が見えているのはこれぐらいかもしれない。
今後、東電は持ち株会社の人員を19年度までに半減させる改革も含めて動いていくことになるが、シナリオ通りにいくかどうかは予断を許さない。万が一、これまで以上に国民負担が増えることになれば、再建の道のりはより一層厳しいものになる。