豊かになるために特別な才能はいらない

「お金のIQ」(http://president.jp/articles/-/21220)を高めたら、次は人生の命運を分ける、お金持ちになるための道の選択だ。『ユダヤ人大富豪の教え』などの著書を持つお金の専門家・本田健氏に話を聞いた。

「最終的には、自分の年齢と才覚を踏まえたうえでリスク計算をし、今できることを探すことになります。たとえば、勉強が得意な20代の学生が就職活動の段階でエリートコースに乗れるよう努力すれば、ローリスク・ミディアムリターンのそこそこ裕福な人生が送れることになります。しかし、30代で平均的なレベルの企業に勤めている人なら、一流企業への転職を目指すよりもビジネスを興したほうが成功確率は高いでしょう。

『才覚』というと飛び抜けたビジネスアイデアが必要だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。たとえば、クリーニング店やレストランは、比較的マニュアルに落とし込むことが簡単な業種です。いつも自分が利用する店のことを考えても、特別なアイデアがあるようには思えないのではないでしょうか。それでも、ごく一般的なクリーニング店を開店して、月30万円程度の利益が出るようになったら他人に任せる、ということを続けていれば、それが30店舗になった時点で年収は1億円になります。その年収を数年から数十年間維持することができれば、資産1億円以上の『富裕層』の仲間入りです」

テレビ取材を受けるような人気店をプロデュースすることができなくても、飛ぶように売れる商品やサービスを開発することができなくてもいい。地道にお金持ちになる方法はいくらでもあるということだ。あまり大きなリスクをとらず、今の自分にできることは何なのか。「豊かになる」ことを目標に、このあたりの見極めをすることが肝心なのだろう。

ただし、「大成功」となると話は大きく変わってくる。

「ビジネスの世界で桁外れの大成功を収める人は、大きなリスクをとって勝負している人たちばかりです。ソフトバンクの孫正義社長はその代表格。彼は、1億円しかお金がないときに1億円を投資して、100億円あれば全財産100億円を投資する、というある意味規格外のやり方で、あれほどの大企業をつくり上げました。ですが、リスクについて少しでも考えていたら、絶対にあんな行動はできないはずです。つまり、いい意味で怖いもの知らずで、安定した社会生活を送るうえでの欠陥を抱えた『壊れた人』でないと、何百億、何千億円という財を成すことはできないのです」

しかし、「自分には大実業家のような思い切った行動はできない」と落ち込む必要はない。そもそも、知的で真面目なサラリーマンが自分の特性を変えてまで大実業家を目指すことは現実的ではないのだ。本田氏は、「サラリーマンは資産5億円以上の『超富裕層』を狙わないほうが幸せになれる」とアドバイスする。

私たちが目指すべき「お金持ち」とは、ある年は2億円稼いでも次の年には2億円損をする危険のある「一攫千金」的なお金持ちではない。都心のタワーマンションに住み、外車に乗って、毎年ハワイやヨーロッパにエコノミークラスで家族旅行をするような人たちのことだ。数字で表せば、年収3000万円程度で資産1億円程度ということになるだろう。そう聞くと、自分とは無関係に思えていた「お金持ち」の姿が、徐々に鮮明に見えてきたのではないだろうか。また、闇雲に「もっとお金がほしい」と感じていたときよりも、自分の取るべき行動が定まってきたはずだ。