シナリオをつくれば、社員の気持ちは奮い立つ

人が動く環境づくりは商品戦略においても必要です。今、我が社では「フルグラ」がよく売れています。今はよく売れているけれど、数年前までは、いい商品だけれど思ったように売れないので困っていました。

どうやったら売れるかは、やはり示してあげないとダメです。売れたら、みんなが「売れるんだ」という気になります。

そのためには売れるためのシナリオを上手に書くことです。

最初に手を付けたのがネーミング。「フルーツグラノーラ」は長すぎるので、もっと短くしよう、「フルグラ」だと。

同時に担当者を替えました。それまでの人は優秀でしたが、長い期間、同じ商品を扱っていると「売れないものだ」という固定観念ができてしまっていました。頭は良し悪しよりも、柔らかいのがいいのです。

次に、これは「時短商品」だと打ち出しました。

とくに仕事を持っている女性は朝が忙しい。お化粧もしなければならないし、今日着ていく服もあれやこれやと選んでいるうちに時間が過ぎます。それで朝食が食べられない。女性ですから、食べられなかったからと電車を降りて立ち食いそばというわけにもいかないでしょう。

女性がパッと食べられる朝食としてフルグラは向いています。それをテレビが番組で紹介してくれ、また売り上げが伸びました。

その次は食物繊維が豊富という点をアピールしました。フルグラ50グラムはバナナ4本分の食物繊維があるからお通じもよくなる。若い女性だけでなく、年をとって腸の働きが悪くなってくる高齢者にも購買層が広がっていきます。

さらに減塩も大事なPRになりました。フルグラは最初から塩分がほとんど入っていないから、朝食をフルグラにすれば昼と夜はそう気をつける必要がない。

商品名をフルグラに変えて100億円を目指し、それが見えてきた段階で200億円を目標にし、今は約220億円(見込み)まできたので、次は500億円だと言っています。

こうやって売れるシナリオをつくり、実際に売れることを示してみせることが大切です。最初はドライバーが必要で、そこから徐々にレバレッジをかけるわけです。売れるに従い、みんなの気持ちが「もっと売れるんだ」と乗ってくるのです。

カルビー会長兼CEO 松本晃
1947年、京都市生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院修士課程修了。72年4月、伊藤忠商事入社。医療機器販売の子会社を経て、93年ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人へ。同社の社長、最高顧問を歴任。2008年カルビー社外取締役に就任後、09年6月より現職。
 
(Top Communication=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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