消費低迷で余暇市場も全般的に冷え込んでいる。だが“安・近・短”の行楽志向は依然として根強い。日本生産性本部が発行している「レジャー白書2009」によると、08年に国内観光旅行に出かけた人たちは6020万人。前年より320万人増えた。なかでも日帰りバスツアーの人気は高く、5000~7000円前後の価格帯を中心に売れているという。
4月の日帰りツアーの参加人数(予約含む)が前年同月比150%と増えたクラブツーリズム・東京バス旅行センターの鍵岡靖泰支店長は「キーワードは“旬”。春なら花、秋なら紅葉が主力商品になる。加えて、求められるのが“魅力”。目的地、味覚、イベントなどに価格以上の価値があるかどうか……。最近では、企業の工場見学やウオーキングツアーなども好評だ」と語る。
この市場を支えているのは60代の女性だ。国内観光は成熟市場だけに、利用者の目も肥えている。単なる物見遊山ではなく、新しい出会いや学びを提案できれば、高い確率でリピーターとなっていく。彼女たちは、比較的時間と小遣いに余裕もあり、年に数回ほど利用することによって市場を活性化させているといっていい。
いまや日帰り旅行は、特別な行事ではない。鍵岡支店長も「ショッピングと同じように、その日1日を気軽に楽しむという感覚になってきた」と捉えている。つまり、日常型レジャーの範疇であり、宿泊や海外旅行より垣根が低い。使用するバスも乗り心地の良さを増しており、ファン層はさらに拡大していきそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)