(4)脅しを実行しそうな人物に権限を委譲する

交渉に費やした時間やエネルギーや資源は、あなたが合意を切に望んでいることをおのずと物語ることがある。交渉に投じたものが大きければ大きいほど、決裂も辞さないというあなたの脅しには信憑性がなくなるのだ。

このような場合には、代わりに別の人間に交渉を行わせるという方法がある。交渉が決裂してもあなたほど失うものが大きくない誰かに、権限を委譲するのである。脅しを実行する権限がそれを最も実行しそうな人物に委譲されたとき、信憑性は高くなる。

自分が交渉に入れ込みすぎていると感じたときは、脅しをかけたあとで、「今後は私の上司が交渉を行うことになる」と宣言するのも一案だ。そして、「最終決定を下すのは上司であり、彼はこの交渉が決裂しても私ほど失うものはない」と説明するのである。また、自分の後任は自分より強硬派だとほのめかして、「私は交渉を決裂させたくないが、今後は彼が担当することになり、彼は現在のオファーに満足していない」と述べてもよい。

(5)脅しを本当に実行するという評判をつくり、それを利用する

あなたが脅しを本当に実行する人間だという評判を得ていれば、その脅しはより信憑性を持つ。言ったことは必ず実行するとか、主義主張のためには金銭を犠牲にするのを厭わないという評判を得ている場合も、あなたの脅しは効き目があるだろう。「評判資本」を築くために、毎回、意図的に強硬姿勢をとるネゴシエーターもいる。

(6)未来の可能性を利用する

ある作家がある地域で自分の本を販売する権利を売ろうとしているとしよう。かなりの販売力を持つ出版社がその地域に1社しかないとしたら、作家にはそこと契約する以外に選択肢がない。そのことを知っている出版社は、低い価格をオファーするだろう。

そのような場合、この作家は、相手のオファーを受け入れることがこの地域では賢明かもしれないが、それは他の地域の出版社と交渉する際に悪い前例になると主張すればよい。そうすれば、他にオファーがなくても、この作家が低いオファーをけることは理にかなっていることになる。そのため出版社は、自らの立場の強さとその要求の妥当性についておそらく考え直すだろう。

(翻訳=ディプロマット)