清涼飲料市場は、ここしばらく年率2%の伸びで推移してきた。だが半面で、リーマンショック以来、デフレ傾向も続いている。価格を下げてでも数量を確保するという考え方だが、それは市場が拡大していればこその話で、人口減少で成長が鈍化してくれば戦略の見直しは不可欠だ。

サントリー食品インターナショナル社長 小郷三朗氏

私自身、長く宣伝畑を歩いてきたが失敗も山ほどある。昭和50年代末に、飲料市場の30%のシェアを持つ日本コカ・コーラグループの牙城を崩すべく、勇んで発売した「サスケ」が鳴かず飛ばず。わずか1年で撤退した。

しかし、それが次の発想の肥やしになっている。サントリーのDNAともいうべき「やってみなはれ」の精神とは、失敗を糧に市場の真実に一歩近づくことだ。業界での競争は厳しさを増すものの、こうした自由闊達な企業風土があれば、さまざまな工夫ができ成長の余地はある。

当社は、株式を上場した3年前から「脱デフレ戦略」をはっきりと打ち出してきた。販売数量増による成長を基本に置きながらも、高付加価値商品を手がけることで、不毛な過当競争に巻き込まれないことを心がけてきた。

だから、ファンの多い日本茶「伊右衛門」を進化させ、特定保健用食品の「伊右衛門特茶」を出せたことには手応えを感じている。

機能性飲料は価格設定も粗利率も高くできる。これを「サブカテゴリー戦略」と呼んでいるが、そのことでブランド力がより一層強化されたと思う。

商品力もさることながら、販路の拡大も同時並行で進めるべき経営課題だった。昨年、日本たばこ産業(JT)の飲料自動販売機事業を1500億円で買収したのはその一環にほかならない。この結果、われわれは一夜にして26万台の自販機を手にした。

しかも、今回の買収は単に規模の経済を追求したというだけではなく、JTの強みであるオフィスビル内のサービスのノウハウも取得できた。ここでは、コーヒー専用機など利益率が高い機種も採り入れていく。