19年卒生以降就職率低下の危機
9月12日、経団連から2018年入社の採用スケジュールが「今年と同様」と発表された。15年採用までは大学3年の12月に会社説明会、4月に選考(採用面接)が解禁されていたが、16年採用は3月に説明会、8月に選考解禁に。さらに17年採用は3月に説明会、6月に選考解禁と2年連続でスケジュール変更が行われてきた。
「特に16年採用では混乱が多かったですね。学生側はスケジュール感がつかめず、いつ何をすればいいのかがわからない。企業側は、学生人気の高い大手がスケジュール通り選考するために、先に選考を行った中堅・中小の内定を辞退する学生が相次ぎました。
それに比べると、今年は大きな混乱はなかったようです。経団連が会員企業を対象にしたアンケートでも、約7割が16年採用の日程より評価すると回答しています。一方、説明会から選考までの期間が3カ月と過去最短だったこともあり、学生にとって『見たことのある』金融や食品メーカーなど大手のBtoC企業に人気が集まりました。今の学生が安定志向ということもありますが、準備期間が短いとBtoB企業まで目が向きにくいのです。混乱がなかったのは、売り手市場のおかげもあります。全体的に内定がとりやすく、学生からの不満が抑えられているのではないでしょうか」
こう話すのは、採用アナリストの谷出正直氏だ。新卒の有効求人倍率は1.74倍と昨年の1.73倍からわずかに上昇し、5年連続の上昇となった。求人総数も前年比で1.5万人増加している。しかし、円安やアベノミクス効果で業績が好転したのは過去の話。円高や中国の景気減速懸念などにより、減益を予測する企業も増えてきている。それにもかかわらず採用抑制が起きないのは、前年の採用で予定通りの人数を確保できなかった企業が多かったからだと言えそうだ。来年以降も学生にとって有利な状況が続くとは限らない。さらに、経団連は来春までに19年の採用スケジュールを発表するとしているが、ここにきてスケジュールよりも大きな変更があるかもしれないという。