公的マイナンバーは、(1)すべての国民が、(2)1人に1つ、(3)一生変わらない番号、を割り振られるため、非常に強力です。ただし利用範囲は、(4)別表に記載されている行政手続のみ、に制限されています。一方、「携帯端末ID」は、公的マイナンバーと同じ「個人識別符号」というゾーンに踏み込んでいます。個人識別符号とは、2015年9月に成立した「改正個人情報保護法」で法的保護の対象となった概念です。マイナンバーのほか、運転免許証の番号などが政令で指定されると言われています。さらに今後、病院間でのデータ連携に活用される予定の「医療等ID」も保護対象になるでしょう。
「携帯電話の端末IDなど機器に付番するものは個人識別符号ではない」という考え方もありますが、私は「保護対象ではない」と言い切るのではなく、詳しい検討が必要だと思います。そうした番号で、個人の行動履歴を捕捉できることがあるからです。たとえばアメリカではプライバシーを巡って、こんな問題がありました。
ある女子高校生の家に、ベビー用品のDMが次々と届きました。父親は「娘はまだ高校生だ」と抗議し、広告主は「年齢で区切るべきだった」と謝罪しました。しかし実際に娘は妊娠していたのです。
広告主は、ポイントカードを通じて店舗から購買履歴を取得し、購入者のライフスタイルを分析することで、一定のグループごとにDMを発送していました。たとえば薬局で妊娠検査薬を買い、その後スーパーで柑橘類を買うなど一定の購買履歴を積み重ねれば、自動的に「妊娠した女性」と認識され、DMが送られてくるわけです。
こうした「行動ターゲティング広告」は、社会が階層化して趣味嗜好もバラバラになっている現代では容認せざるをえないでしょう。ただし、そのためには消費者のプライバシーへの配慮が欠かせません。公的マイナンバーだけではなく、民間マイナンバーにも法的規律が必要です。