社内カー・オブ・ザ・イヤー

豊田社長は以前から「いいクルマを作ろうよ」と折に触れて語っている。個人向け乗用車、商用車を含めさまざまなクルマをフルラインナップで製造・販売しているトヨタにとって、いいクルマというのは1つではないはずだという思想は、前編で述べた7カンパニー制の話にもつながる。

「もっと違う形でトヨタのいろんなクルマに光を当てていきたい。そう考えて、2010年から社内で『トヨタアワード』というのを始めました。これはトヨタの従業員の投票で決まる、社内のカー・オブ・ザ・イヤーです。社員投票で選ばれたのはプリウスとレクサスIS250Cでしたが、わたしはレースに出る時に使っているモリゾウというニックネームにちなんで『モリゾウ賞』を作り、タクシー車両の『クラウン・コンフォート』と『コンフォート』を選びました※1。地味でも社会に無くてはならない名脇役。そういうクルマにスポットライトを当てたいと考えたんです。

このモリゾウ賞は、毎回社員が意外に思うようなクルマを選んでいます。世界中で活躍している『ハイエース』とか、北米でずっと売れ続けている『カムリ』とか※1。でも、同じことをずっと続けているとただの慣習になってしまう。変わったクルマを選んでも誰も驚かなくなります。それでは意味がないので、現在はモリゾウ賞は止めてしまいました※2。大事なのは、全部のクルマがトヨタの過去も未来も支えているということであって、今年のスターを1台だけ選ぶことには、あまり意味はないんです」

トヨタは現在、世界の新車販売台数でトップを走っている。豊田社長の7カンパニー制という大胆な組織改革や、社内アワードの創設などの意識改革によって、大きくなり過ぎたトヨタが自己改革できるかどうか、この数年でそれが決まる。プリウスPHVはその重要な一歩になるはずだ。

貨物車・商用車としておなじみのバン「ハイエース」は、新興国を中心に海外での支持が厚い(左)。ロングセラーのセダン「カムリ」は特に北米市場で高い人気を誇る(右)。

※1 編集部注:クラウンコンフォートとコンフォートは2010年度(トヨタアワード2009)、ハイエースは2014年度(トヨタアワード2013)、カムリは2012年度(トヨタアワード2011)のモリゾウ賞を受賞した。
※2 編集部注:モリゾウ賞は2015年度で終了したが、社内カー・オブ・ザ・イヤーは現在も続いている。

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