今年の夏、前にも本稿で紹介した小学4~6年生を対象とした「キッズBOKI・夏期特別教室」を本格的に開講した。ケーキ屋を舞台にした商売を想定し、簿記を覚えることで商売の成り立ちを知り、お金の大切さ、尊さを学び、使い方を考える習慣をつけさせるのが目的だった。

結局、3日間の教室に参加してくれたのは、小学3年~中学1年生までの計19人。子供たちは予想以上に熱中して、このうち16人が見事に完走した。

修了間際ともなると「減価償却」「当期純利益」「売掛金」「買掛金」といった会計用語を子供たちはサラリと口にするようになっていた。授業は保護者にも見学してもらっていたのだが、目の前で子供たちが遊び感覚で複式簿記を理解していく様子は、かなりの驚きだったようである。

今回用意したオリジナルのテキストでは、高学年になって習う「貯金」といった漢字や、小学校では習わないもののビジネスの現場では頻繁に使われる「益」「償」などの漢字をあえて使った。単に漢字を覚える勉強と、簿記を学ぶために必要な漢字を覚えるのでは大きな違いがあると考えたからだ。実際にはルビをふっていたものの、子供たちの頭のなかにはすんなりと入っていき、その漢字の持つ意味もイメージできていったようである。

さらに、何百万円、何千万円と単位が大きくなると計算に戸惑う子もいたが、授業を進めるにつれて計算が速くなるなど、計算力も向上した。簿記を学ぶことで、国語、計算の力も育てられたと自負している。

キッズBOKI検定の問題例

キッズBOKI検定の問題例

そして完走者の16人全員が卒業試験に挑戦して、見事合格を果たした。この卒業試験は「キッズBOKI検定10級試験」で、いわば“柴山認定試験”である。しかし、図にあるように、その内容は実践的だ。

実は完走者のうち5人は、11月21日に実施される日商簿記検定の3級と4級に同時チャレンジする。何も私や親が無理強いしたわけではない。子供たち自ら「キッズBOKIの授業が面白く、自分の力試しをしたい」といってきたのだ。

受験対策として、特別講習の修了後に毎週1時間半の補習授業を12回ほど行うことにした。テキストはもちろんオリジナル。たとえば初日のテキストでは、多くの取引から現金出納帳に記入すべき項目を選んで記入し、取引の結果、月末の残高を求めるといった実践問題がこなせるまでの内容となっている。

ちなみに、日商簿記4級の検定は年に3回行われ、今年6月には約900人が受験している。その合格率は約50%だったが、私の教え子は、よければ全員が合格できるのではないかとみている。

さらに、低学年向けの「プチキッズBOKI」も検討している。それというのもお母さんたちの話を聞いていて、今の子供たちは、お金は銀行に行けば貰えるものと思っていることがわかったからである。

確かに給料が現金手渡しだった時代には、お金はお父さんが家に運んできた。そのお父さんを労おうと、給料日の夕飯のおかずは一品多いといった体験から、肌身を通してお金を稼ぐことの尊さを知ることができた。

しかし、銀行振り込みである現在、お金は働いた対価であり、親の労働で生活が支えられていることを子供が窺い知る機会は少ない。お金の尊さを知り、大事に扱う必要性をプチキッズBOKIでは教えたい。

小学1年生になった娘には、小遣い帳をつける練習をさせてみたが、勘定が合わないことに悪戦苦闘しながらも、きちんとつけられるようになった。やればできる。

12月上旬に予定されている簿記検定合格発表を今から楽しみにしている。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)