違和感を意図して作る“本当の意図”とは

企業は採用を行う際、募集告知などのプロセスで、「自社で既に働いている人と似たような人が欲しいです。同種の人を求めています」とは決して言いません。むしろ、今までの殻を破ってくれるような、それこそ、異質な人を求めていると公言するはずです。その言葉にうそはありません。

同質性の高い人をそろえるメリットはとても大きく、例えば、似たような考え方を持っている人たち同士だと、価値観の共有などもスピーディーに行え、コミュニケーションにかけるコストが大幅に軽減されます。同じような方向を見て仕事をしてくれるので、仕事自体にムラが生じにくく、均質であればあるほど、アウトプットの質も(高まるかどうかは別にして)そろってきます。

これは企業にとってはとても大きなメリットなのです。しかし、同時に諸刃の剣でもあります。

同質性が高まれば高まるほど、新しい視点でモノを考えたり、まったく異なった発想で仕事を進めたりする、という人が出現しません。俗に言うイノベーションが起きにくい状態が生まれてしまうのです。常に進化し続けることにより、企業としての発展と継続を願う経営者にとって、その状態は決して好ましいものではありません。

したがって、人材採用においては、同質性を重要視するのか、そうではない部分に期待するのか、ある程度の意図を持たせるのが通例です。例えば、新卒採用の場合、自社の社員と似たような人を8割、少し異質な人材を2割などと、意識して比率を設定するようなケースも珍しくありません。

少し勘のいい人ならば、内定式で「えー、こいつってうちの社員っぽくないな」と感じる同期が一定数いることに気付くかもしれません(逆に「自分と似ている人がほとんどいなかった」という人は、“残りの2割”だった可能性が大です)。