同族企業がダイバーシティを推進しやすい理由
【梅田】男女雇用機会均等法以降、企業が女性活用についていろいろやってきたけれど、あまり進まなかった原因は、当の女性自身も男性と同じようになろうとしていたからではないでしょうか。私もその世代で、「チャック女子」と言われていましたけど(笑)。
でも本当にダイバーシティを進めるなら、違いを認め合う必要がある。外国人を入れると女性活用も進むのはなぜかというと、外国人と一緒に働こうとすれば、一生懸命相手を理解しようとして、違いに目を向けますよね。それから「自分は相手とどう違うか」と、自分を顧みる。そこに効果があるんじゃないかと思います。ですからダイバーシティで重要なのは、むしろ「違いを意識する」ことがではないかと思います。
【入山章栄(以下、入山)】人間だけでなく生物は、自分と似たものとつながりやすいんですよ。これをホモフィリーと言います。つながりやすい理由は、当たり前ですけど考え方などが似ているほうが快適だから。
一方でダイバーシティというのは、違う考えを持った人が入ってくるわけですよね。はっきり言うと、自分の考えを否定する人が組織に入ってくるということなのです。それを受け入れる度量があるか、ということですね。
そう言うと、「先生、それじゃ意見がまとまらないじゃないですか」と言われます。そこで大事なのがビジョンなのです。意見はバラバラでも、目指すところが一緒なら、「お前の方が正しいのかもしれない。じゃあ、今回はそれで一緒にやっていこう」ということになるのです。
永谷園が大隅さんのような“暴れん坊”を受け入れたのは、同族企業だからという面もあると思います。これは統計的に分かっていることですが、日本企業で利益率も成長率もいいのは圧倒的に同族企業、あるいは創業経営者がトップを務める企業です。
なぜなら同族企業というのは[家族=会社]なので、短期的な利益に左右されず、長期的なビジョンで経営が可能だからです。しかも比較的ワンマンなので、経営者のリーダーシップで、いろんな採用ができる。ダイバーシティで有名なカルビーの松本晃さんも、ご自身は創業家に請われて社長になりましたが、オーナーは同族ですよね。同様に有名なLIXILも同族です。だからダイバーシティを進めるには、同族企業のほうがやりやすいんです。
そう考えると、サラリーマン社長がダイバーシティを推進するのは結構大変かもしれません。IBMがダイバーシティを進めることができたのは、ルイス・ガースナーというリーダーがビジョンを示したからです。ですからこれを言うと身も蓋もありませんが、最後はトップのリーダーシップが大事だ、ということですね。