女性のキャリアを変えた「職制転向」

大和証券は一般職から総合職へと女性の職制転向を進め、09年以降で、約1000人が職制転向者となっている。しかし、トップダウンの改革には最初は混乱もあった。池田亜美加氏(1999年入社/人事部人事一課次長)は一般職入社で、女性活用のスタート時を覚えている。男女別々の課だったのに、突然資産運用コンサルタントとして男女で同じ研修を受けることになったのだ。

「同期の女性には後ろ向きの人もいました。でも、周りも『チャンスなんだから』と勧めてくれて、やってみたら何とかなったんです」

【写真左】人事部人事一課次長・池田亜美加氏「挑戦することに後ろ向きの人もいましたが、やってみたら何とかなった」【写真右】人事部人事一課課長代理・西山真里氏「女性はお金を預けていただく仕事に向いている」

職制転向も最初は年数十人単位だったのが、100人単位で年々増えてきた。転換した人が活躍し昇進スピードも違うのを見て、「職制転向しそうもない」人も転換するようになっていく。

鈴木氏も当初は「事務の仕事が好きなので、異動させないでください」という直訴の手紙をもらったことがある。

「気持ちはわかるんです。でも時代が変わってきた。昔は現金や株券を店頭で受け渡しする作業があったが、今はキャッシュレスでバックオフィスの仕事が半減しています。すぐに営業をやらなくてもいいから、エリア総合職になりなさいと徐々に進めていった。今支店長をやっている女性も一般職から変わった人たちです」

09年大和証券は、業界の先陣を切って女性役員を一気に4人出したことで有名になった。複数人いっぺんに役員を出したことには意図があった。大和には80年代にも女性支店長がいたが、一人だけだと、何か起きるとすぐに「やっぱり女性はダメだ」と言われた。その轍(てつ)を踏まないように、鈴木氏は役員に昇格する候補が複数そろうまで登用を待ったのだ。女性に活躍してもらうには、丁寧なバックアップ、複数人を一度に登用し、環境を整えることが必要なのだ。鈴木氏は「女性を起用して支店の成績が落ちても支店長の責任にはしない」とコミットしている。女性たちもそんな思いに応える結果を出している。

撮影=広川智基