メンタルモデルを客観的にとらえる
メンタルモデルを明らかにする2つ目の質問では、自分が下している「評価」を問い直します。「評価」を問い直すとは、どの出来事に対して自分がどのような評価をしているのか、そしてなぜそのように評価しているのかを明らかにするという意味です。具体的には、「私はこれについてどう思っているのか」、「なぜ私はそう思うのか」と問いかける質問です。
【自分の「評価」を問う質問】
質問:自分はAさんの行動をどのように評価しているだろうか。
答え:自分は、Aさんの判断は間違っていると思っている。具体的には、まずAさんはミーティングに参加するべきだったし、参加するかしないかの判断をAさん自身がするべきではなかったと思っている。
質問:自分はなぜそう思っているのだろうか。自分の評価は適切だっただろうか。
答え:自分は、Aさんがミーティングに参加するかどうかを決めるのは、Aさんではなく自分だと思っている。だが、Aさんはそう思っていないかもしれない。そもそも、なぜAさんがミーティングに参加しなければいけないのかを、自分はAさんに十分に伝えていないのではないか。
このように、自分の観察と評価を振り返ることで、自分が知らず知らずのうちに持っていた前提や思い込みを思考の俎上(そじょう)に載せることができるようになります。自問自答を通して自分が持っているメンタルモデルを客観的にとらえることで、メンタルモデルを検討し修正することが可能になるのです。
リーダーが適切な自問自答を繰り返すことにより、自身の思い込みに気づくことができます。しかし、他者からの視点の存在により、袋小路に陥っていた問題の本質的な原因を容易に明らかにできることもあります。次回は、自分ひとりだけではなく、他人も巻き込んで思い込みから自由になり、普段考えもつかないようなアイディアを生み出すための質問についてお伝えします。
日本アクションラーニング協会 代表。
東京女子大学文理学部心理学科卒業後、事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。ジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。2007年1月よりNPO法人日本アクションラーニング協会代表。