質問の受け止められ方まで注意を払う
人のやる気を引き出し、動機付けるためには「肯定的」で「未来志向」な質問を問いかける必要があると述べてきました。例えば、「否定的で過去志向な質問」を「肯定的で未来志向な質問」に言い換えると次のようになります。
「なぜこれをやらなかったのですか?」【否定的・過去志向の質問】
→「もしこれができるなら、どんなことが起こりそうですか?」【肯定的・未来志向の質問】
「どうして『できない』と思ったのですか?」【否定的・過去志向の質問】
→「できそうだと思えるのはどんなところですか?」【肯定的・未来志向の質問】
人を動機付けるためには、物事と本人との関係性に気付かせ、「できる」と思わせる必要があります。そのために必要なのは「過去のできなかったこと」に着目するのではなく、「未来のできること」に視点を移すことです。できなかったことを責めたてるのではなく、これからできることに焦点を合わせて問いかけることにより、当人が物事に対して積極的に関わるよう促せるのです。
ただ、こうした質問は、既に述べたように言葉を変えただけでは意味がありません。質問の意図やその文脈によって、同じ言葉でも全く違う捉えられ方をされることもあるのです。ですから人に対して質問するときは、言葉に気を付けると共に、相手がその質問をどのように受け取ったかを注意深く見て取ることが必要です。
これまで、6回にわたって問題を共有するための質問、そして人を動機付けるための質問についてお伝えしてきました。次回からは「チーム」で思考を共有するための質問を紹介していきます。
株式会社ラーニングデザインセンター代表取締役、日本アクションラーニング協会代表、OD Network Japan 理事、WIAL公認マスターALコーチ、青山学院大学経営学部 客員教授。
東京女子大学文理学部心理学科卒。毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)にて事業企画や人事調査などに責任者として携わった後、渡米。ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士取得。マーコード教授の指導のもと、アクションラーニングの調査・研究を重ねる。帰国後、2003年株式会社ラーニングデザインセンターを設立。著書に、『質問会議』(PHP研究所)、『「チーム脳」のつくり方』(WAVE出版)、『対話流』(三省堂)、『20代で身につけたい質問力』(中経出版)。