やる気は未来への期待から生まれる
もう1つの要素である「未来志向」とは何を意味しているのでしょうか? この要素についても逆のパターン、つまり過去に焦点を合わせた質問を例にすると分かりやすいでしょう。過去に焦点を合わせた質問というのは、例えば「なぜ○○ができなかったのですか?」というように、過去に起こった内容を聞くような質問です。こうした質問は、事態の背景や原因を探るためにはとても有効です。しかし、「過去志向」の質問を繰り返しても、人のやる気は引き出せません。なぜなら、過去への質問とは終わったことへの質問であり、もう変えることのできないことに対するものだからです。
ここで「何か問題が起こった」という状況を想定して、過去に焦点を合わせた質問をいくつか挙げてみます。皆さんはこうした質問を聞いてどのような気持ちになりますか?
「どんな対処をしてきたのですか?」【過去志向の質問】
「どうしてこの問題は防げなかったのですか?」【過去志向の質問】
「誰がこの問題を引き起こしたのですか?」【過去志向の質問】
こうした質問はいくらでも考えられますし、普段の仕事の中でも口にしてしまいがちです。なぜこうした質問はやる気を引き出さないのでしょうか。それはやる気を引き出すために必要な「できると思える」という気持ちは、これから起こる「可能性」への期待によるものだからです。ですから、人のやる気を引き出そうとするときは、これから起こることに焦点を合わせた「未来志向」の質問が必要です。
それでは、未来志向の質問で「何か問題が起こった」状況に対しての質問を作ってみましょう。
「これから、この問題にどう対処していけばよいでしょうか?」【未来志向の質問】
「どうしたらこの問題の再発を防げるでしょうか?」【未来志向の質問】
「この問題を誰と解決していけばよいでしょうか?」【未来志向の質問】
先ほどの過去に焦点を合わせた質問と比べて、受ける印象がだいぶ違うのではないでしょうか。しかし、3つの質問の趣旨はそれぞれ同じです。それではどのように「肯定的」と「未来志向」という2つの要素を組み合わせればよいのか、具体的に考えていきましょう。