公示地価が示す不動産のトレンドとは何か。エコノミストの崔真淑さんは「どこに住むかは、どう生きるかと同じ意味を持っている。だからこそ、人口の動きと地価のトレンドから未来を選ぶ目を養える」という――。

公示地価は4年連続の上昇傾向

2025年の公示地価が3月19日に発表されました。何よりも注目すべきは、4年連続でこの指標が上昇したことです。

公示地価とは、簡単に言えば「国が定めた“土地の参考価格”」のこと。毎年1回、国土交通省が全国の標準的な土地の価格を調べて公表している数値で、不動産の売買や相続、税金の算定などの基準として使われています。地域ごとの景気や都市の成長、人口動態の変化などを読み解く重要な指標でもあり、いわば「地価のトレンドを知るバロメーター」として、ニュースや投資家、不動産業界からも常に注目されている価格です。

今年の公示地価は全国平均で前年比2.7%の上昇となり、バブル崩壊後では最も高い伸び率になりました。報道によれば、東京・阪神・名古屋といった主要都市圏では平均4.3%の伸びを示し、特に都心部では住宅地で2.1%、商業地で3.9%、工業地で4.8%と、力強い上昇を見せました。

さらに、札幌・仙台・広島・福岡といった地方中核都市では5.8%の伸びとなり、調査対象地の約6割でコロナ禍前の水準を上回りました。交通の利便性や再開発、そしてインバウンド需要の高まりといった背景が、これらの伸び率を導いたといえるでしょう。

20年間で1.4倍に膨らんだ全国の空き家数

一方、中核以外の地方では事情が異なります。少子高齢化による需要減少に加え、空き家の増加が供給過多を招き、地価の上昇率は限定的、あるいは下落を見せています。

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は2003年の659万戸から、2023年の900万戸に増加。この20年間で約1.4倍に膨らんでいる状況です(*1)

【図表】空家数及び空家率の推移(全国、1978~2023年)

実際、地方都市でも地域ごとの差は大きく、成長の持続性は不透明です。この地域格差は、経済活動、人口動態、都市計画などの違いから生じていて、今後の不動産市場が二極化していくことを示しています。投資や人口流入が地価の上昇を支えている都市部に対し、地方は住民や土地のニーズ、すなわち“需要の確保”自体が難しくなっていくということです。

*1 総務省「令和5年住宅・土地統計調査