長時間労働の改善はトップダウンで
リードスピーカーの1人、経済同友会の小林氏は、「グローバル、IT、ソーシャルの3つのうねりが押し寄せ、人々の価値観や生活が大きく変わりつつある」とワークライフ・バランスが今注目される背景を説く。この3つのうねりは、日本経済が直面している課題とも直結する。重工業などハードウェア中心の産業から形や重さのない情報とその処理に収益源が移行しているというトレンドに、どのように日本が対応するのかは今後のポイントになると述べた。
ワークライフ・バランスについては、先に経済同友会が発表した「世界に通ずる働き方に関する企業経営者の行動宣言」で提唱した“スマートワーカー”(主体性な生き方、働き方を選択する人)が同義になる。ここでは、「個人の主体性が発揮され、顧客視点で働ける環境を創る」「多様な人財をリーダーとして育て、登用・活用する」「働いた時間の長さではなく成果で評価し、処遇につなげる」「働く時間や場所のフレキシビリティを確保する」などを提言しているという。
ラウンドテーブルでは、ワークとライフのバランス、あるいはマネジメントの前に、まずは長時間労働をいかにして減らすかに注目が集まった。
例えば、大和総研の是枝氏は、入社時に大和証券グループが19時前退社を励行していたために、自分の時間を生かして勉強をして社会保険労務士の資格を取ったなど自らの経験を語った。「与えられた仕事だけではなく、他の場面でも勉強して成長できた」(是枝氏)。これは、トップダウンで行われた労働時間制限が有効だったと振り返る。また、配偶者の活躍も重要だという。「夫婦2人分の収入があれば、十分豊かな生活を送ることができる」と是枝氏、男性が1人で昇進して稼ぐよりも、女性の活躍を支援して育児や家事を積極的にやることは「最大の投資だ」と語った。