リーダーの立場からは、日本電気の遠藤氏が意見を語った。リーダーシップをもって労働時間を短くするという観点で取り組めることとして、「プロセスのシンプル化」があるという。会議の時間を短くする、5時以降は会議を開かない、などだ。もう1つが、「情報の共有化」だ。ある人が抜けても他の人がサポートできる体制がなければ、柔軟性、多様性のある働き方はできない。これは仕事だけではない──「妻が病気の時、子供に料理を作ったところまずいと言われた。子供の好物についての情報共有ができていなかったから」と言って会場を沸かせた。
北都銀行の斉藤氏は、実際の調査に基づき長時間労働の無意味さを実感している。「店舗を分析した結果、残業と業績は比例していないことがわかった。それどころか反比例している」と斉藤氏。やはりプロセスを変えていくことが、対策の鍵を握ると考える。具体的には「紙の文化」を変えることを提案した。「紙の資料を作るのに時間をかけていて、議論がまったく成されていない。スピードも遅くなる」と斉藤氏。「紙から議論に変えることでスピードも上がり、業績も向上する」と続けた。その実現には、トップがリーダーシップにより改革を行うしかない、と述べた。
子供の教育環境から見直しを
佐々木氏は、イー・ウーマンが主催する「国際女性ビジネス会議」でも多様な働き方が重要なテーマになっていると報告した。多様な働き方に対しては、ポリシー、そして意識・行動の2つの面を分けて取り組むべきだと述べた。意識・行動では、多くが挙げた“リーダーシップ”に合わせて、興味深い指摘をした──それは”教育”だ。特に都心では小学3年生頃から中学受験を睨んで勉強し、夜遅くまで塾に通う。そうやって勉強漬けで小学生時代を過ごし、中学校の部活では上下関係の下で忠誠心を求められ、家族の旅行を理由に休むなどのことができない雰囲気の中で部活に励む。このような子供時代を過ごした子供たちが社会に出て、いきなりワークライフ・バランスといわれても無理、と言うのだ。