わざわざ見たい通販番組をつくる

3年必死で働くと、いろんなスキルが身につきます。仮説を組み立てる方法、物事を考えるフレームワーク、プロジェクト設計などのスキルです。これなら自信を持って転職市場に出られるなと思いましたが、今の私から見ると全然ですね(笑)。

社会人5年目でA.T.カーニーに入ってシニアビジネスアナリストからアソシエート、シニアアソシエートと順調に昇進しました。でも、入社のとき「ここも3年」って決めていましたし、このハードワークは一生できないと痛感していました。

面識はなかったのですが、先にA.T.カーニーを辞めてジュピターショップチャンネルに行かれている方が人を探していると言うので、お話を聞きに行ったら非常にユニークなビジネスで、自分の力が活かせそうでした。それで経営企画で入ることに。一番面白かったのは新しい番組を作ったことですね。ふつう経営企画は番組作りをしないんですが、新しい顧客層を開拓しようという流れの中で、番組制作のプロデューサーのような仕事をしました。

それまでショップチャンネルのお客様は50代、60代が中心で、もう少し若い世代を取り込みたいという狙いがありました。30代、40代も化粧品はけっこう買ってくれるんですが、服はあまり購入していなかったです。けれど服を一度買い始めて満足すると買物の頻度が上って、ロイヤルユーザーになる傾向がある。経営企画でそういった分析を行って、そこからアラフォー向けのファッション番組を発案しました。テレビをつけたらたまたまやっていた通販番組を見るんじゃなくて、その通販番組を見るためにチャンネルを合わせるような内容にしたかったんです。

最初は現場からすごい反発がありました。番組中にBGMを入れようとすると「BGMなんか流しちゃダメだ」とか、服を見せる以上にコーディネートを強調すると「そんなのはダメだ」と。けれども、それが大ヒットするんですね。商品が品切れになったときはすごく手ごたえを感じました。しかも単価の高いものが売れるんです。3万円のパンツとか10万円のコートとか。その番組が「ヴィーナスナビ」で、今でもショップチャンネルの看板番組です。番組を頭から見ていないとすぐに売り切れちゃいます。