【白河】高付加価値の仕事が限られた条件の人しか与えられない状況が問題なんですね。時間的資源が24時間ある人だけじゃなくて、時間制約がある人でも、高付加価値の仕事ができるはずです。時間制約によって、その仕事を奪われ、モチベーションを失い、つぶれていく人材が多い。これが問題だということですね。
【中野】そうです。昇級、高付加価値でおもしろい仕事、管理職になること、が全部セットになっている。でもセットでなくてもいいのではないでしょうか。例えば管理職につかなくても高付加価値の仕事ができるとか。日本の会社はそのセットのレールを外れると、すべて奪われてしまう。走り続けないと全部ゼロになる。少なくともそういう風に見える。これからは変わっていく可能性があるとは思いますが、時期によって緩めたり、また加速したりということがイメージしにくいのが日本企業の現状だと思います。
育休世代の男性は、もっとしんどい
【白河】確かに、日本のワーキングスタイルは特殊だという話はよく出てきますね。先日「ダイバーシティ企業100選」の発表会で、クリスティーナ・アメージャンさん(一橋大学大学院商学研究科教授)が「日本の男性のワーキングスタイルがおかしい。日本はパワポのガラパゴスで、下から3行目の漢字が間違っているというようなことにばかり注力するから長時間労働になる。これではグローバルでは戦えない」と指摘していました。登壇したほかの経営者は「そんなにたくさんのパワポを作るから残業が多くなる」と指摘され、会場は大爆笑。「仕事のスキルはなくても、がんばります! という文化なので24時間働いてしまうんですよ」という意見にはなるほどと思いましたね。
【中野】昔は24時間がんばってみんなで上がっていかれたからよかったのでしょうけどね。今、共働き育児中の夫たちこそ大変だと思います。育休世代の女性は数的にも無視できなくなっているし、数がいることで、ワーキングマザーと一口に言ってもいろいろなタイプの人がいると多少はわかってもらえるようになってきました。でもイクメンはまだ数的にそこまで多くないので、多様性を認めてもらいにくいと思います。男性は世の中の仕組みが変わらない中、社内では色眼鏡で見られてしまうし、妻からは攻められ、追い込まれてしまいます。ある程度育休取得や定時帰りを義務化し、それが不利にならないようにするなどの工夫が必要でしょう。