【白河】先日小室淑恵さんと「ここ2年ほど、女性の活躍や働き方の問題について動いた時期はない」と話をしたばかりです。風が吹いている今のうちにがんばらないと、と多くの人が思っていますね。経営層も本気で女性を含めた多様性や働き方の改革に取り組む人もいますが、企業によって温度差が激しい。経営者からの共感はありましたか?

【中野】読んでくれた女性が上司や夫に読ませようとしてくれるのですが、肝心の経営層や育休世代の夫たちには、女性たちほどは届いたとは思えません。専業主夫のように子育てに関わっている男性は、自分も通ってきた道なので反応してくれるのですが、肝心の育休世代の夫や上司たちにはまだまだ届いていない。まず読むスピードが遅々として進まないし、読んでくれても「へぇ、そうだったんだ」で終わってしまう。そこも課題だと思っています。

【白河】経営層に届けるための話法があると思うのですが、どうすればいいのでしょうか? 女性活用やダイバーシティ、働き方改革が、企業に本当に得になるのかというところが問われます。

【中野】意思決定の場に多様性がないことは、イノベーションやリスク管理の面でマイナスになるという経済学や経済学の分析などは出ていますので、材料はたくさんあると思います。問題はいかに「腹落ち」させるか。女性の意識が低いから管理職になってくれないというわけではないことを示して、ダイバーシティ推進をやらない言い訳をどんどんつぶしていく必要があるかなと思います。今後は、いわゆる粘土層の管理職向けセミナーなどもやりたいですね。環境さえ変われば、女性にはもっと可能性があると伝えていきたいです。

中野 円佳(なかの・まどか)
1984年生まれ。2007年東京大学教育学部卒、日本経済新聞社入社。金融機関を中心とする大企業の財務や経営、厚生労働政策などを担当。14年、育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に提出した修士論文を『「育休世代」のジレンマ』として出版。育休復帰後に働き方、女性活躍推進、ダイバーシティなどの取材を経て、15年4月より企業変革パートナーのChangeWAVEに参画。東京大学大学院に通う傍ら、ダイバーシティ推進パートナー事業で発信・研究などを手掛ける。

白河 桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授、経産省「女性が輝く社会の在り方研究会」委員。
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。「妊活バイブル」共著者、齊藤英和氏(国立成育医療研究センター少子化危機突破タスクフォース第二期座長)とともに、東大、慶応、早稲田などに「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」をボランティア出張授業。講演、テレビ出演多数。学生向け無料オンライン講座「産むX働くの授業」も。著書に『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』『婚活症候群』、最新刊『「産む」と「働く」の教科書』など。