「人間性が出る」シンクロの怖さ
ロンドン五輪では、日本選手は出場することが目標だった。正直、メダル争いは厳しい状況だった。でも、今回は違う。メダルを獲得しにいく。
「私は、選手たちに、本当のオリンピックの醍醐味を味あわせてあげたいんです。最後はハッピーエンドじゃなかったら、失敗したら、ストーリーが完結しないじゃないですか。だから、成功したいんです。そのお手伝いができることが、コーチ冥利なんです」
井村HCの指導の特徴をいえば、「心のトレーニング」も大切にするということである。「人間力」を磨くといってもいい。熊本地震に関連し、井村HCは「私たちに何ができるか考えよう」と選手たちに声をかけている。
「あの子たち、日々の練習が苦しくて、幸せとか感じていないでしょ。でも、よく考えれば、シンクロができる私たちってすごく幸せなことなんです。こういうこと(地震)を目にしたら、私たちは、これ(シンクロ)だけやってていいのって考えなくちゃ」
大会中、井村HCも選手たちも義援金の募金活動を手伝った。
「(被災地のことを)考える、そういうあたたかさがあることが、大事なんだなと思います。シンクロ選手として、何かを表現しているとき、人間性が出るんです。人間性が見えるのが、シンクロのこわさなんです。だから、(被災地の)そういうことも考える人間であってほしいと思っているんです」
メダルゼロに終わったロンドン五輪の雪辱となるか。リオ五輪でのメダル獲得に向け、井村HCと選手たちにとっての、のるかそるかの大勝負がはじまる。